開発業者が全面広告で手なずけた全国紙に伐採着手を仄めかす記事が出始めた7月頃から、田中は1週間に1度は、外苑の森を歩いている。警戒のためだ。カメラは必ず持参する。
樹木の伐採が予定されているエリアは、鉄製の塀で囲っていて、中で何が行われているのか、皆目わからない。ベールに包まれているのである。
きょう16日は胸騒ぎがしたため、脚立を持って行った。最も象徴的で最もデリケートな「建国記念文庫の森」の前で、脚立の上に立ち中をのぞいた。
我が目を疑った。ユンボが入っているのだ。怒りに震えた。鉄塀で外からは見えないようになっているため、いつユンボが入ったのか分からない。樹木を伐採したのか、していないのか。森の中に入って見ないことには確認のしようがない。
ユネスコの諮問機関であるイコモスがヘリテージ・アラートを出し開発計画の撤回を要請したのが7日。東京都環境局と都市整備局が「待った」をかけたのが12日だった。
イコモスの警告は何だったのか? 東京都の「待った」は何だったのか?
明治神宮の私有地であるため「いつユンボを入れたのか?」と質してもまともな回答は得られないだろう。
都心の貴重な緑地帯である神宮外苑の中でもひときわ鬱蒼としているのが建国記念文庫の森だ。古木巨木が密生し原生林の趣さえある。聖地中の聖地であり、開発の手で汚してはならないのだ。
秩父宮ラグビー場を移設して屋根付きにするなどという荒唐無稽な計画さえなければ、森は神聖なままだった。
~終わり~
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