連日連夜、イスラエルの空爆が続くベイルート南郊外のダヒアに入った。ヒズボラが司令部を置く最重要拠点だ。最高指導者のナスララ師もここで暗殺された。
人気(ひとけ)のないゴーストタウンと無残に破壊されたエリアが、線でも引いたかのように分かれていた。
ひとっこ一人いないゴーストタウンとなっているのは、イスラエルが住民に再三、退避勧告を出しているからだ。
小綺麗なマンション街には誰も住んでいない。
雑多な下町はめったやたらと空爆されていた。だが人の往来はある。ミニバイクが路上を走り、縁側で水タバコを楽しむ人々の姿もあった。
案内してくれたヒズボラの構成員に「どんな人たちが、なぜ、こんな爆撃エリアに住んでいるのか?」と聞いた。
答えが悲しかった。
「他に行く所がない人たちが住んでいるんだ。We won’t die outside (我々は外で死ねない=ここで死ぬしかない)」。
地元ジャーナリストによれば「イスラエルのミサイルは東地中海上の海軍艦艇から飛来してくる」のだそうだ。
イスラエルの方角は南であるにもかかわらず、ヒズボラのロケット弾が海の方向(西)に発射されるのを見たことがある。
住宅街のビルは地中深くまで破壊されていた。イスラエル軍がバンカーバスターを投下したのだろう。イスラエル軍は地下に潜んでいたナスララ師を暗殺するのに、バンカーバスターなどのミサイルを8万3千トンもぶち込んだという。
爆撃でできた深くて大きな穴を撮影していたところ、上空を旋回していたイスラエル軍のドローンが一段とうるさくなった。高度を下げたのだ。
昨日、山岳地帯でロケット弾を積んだヒズボラのワゴン車がイスラエル軍のドローンにヒットされたが、そこで耳にしたのと同じレベルのうるささだった。
田中は撮影をそこそこに切り上げて、車で場所を移動することにした。
下町ではないが病院が爆撃に遭っていた。破壊の具合といいガザに似てきた。
「レバノンはガザのように壊滅的になる」とするネタニヤフ首相の予言は的中しそうだ。
~終わり~
【読者の皆様】
大借金をしてレバノンまで来ております。
アラブの民を虫けらのように殺し、国連軍まで攻撃するイスラエルの狂気を見届けたいのです。
とはいっても滞在資金が底を突きかけています。