
ネタニヤフ首相。ヒトラーの上を行く悪魔となった。=映画ポスターより=
映画は警察による尋問シーンから始まる。取り調べを受けているのはイスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフ。
警察の尋問映像が流出したのだ。ネタニヤフ周辺の業者に対する尋問の映像も一緒に流出した。汚職事件の参考人たちである。
参考人たちの証言は法廷ですでに検証されており、真実であることが確認済みだ。ネタニヤフの尋問映像と突き合わせることで、ネタニヤフがウソ八百を並べ立てていることが一目瞭然である。
ネタニヤフの汚職は真っ黒けなのだ。司法長官は5年前にネタニヤフを汚職(収賄罪)で起訴した。
だが、審理は進まない。ネタニヤフが軍の最高司令官だからだ。戦争が続く限りネタニヤフは収監されない。ここにガザの惨劇がある。

人質奪還集会。家族は怖くてネタニヤフを批判できない。批判すれば報復で人質奪還を遅らせたりされるからだ。=3月、テルアビブ 撮影:田中龍作=
クネセット(イスラエル国会)の定数は120議席。ネタニヤフ連立政権は計62議席。かろうじて過半数なのだが、このうち極右2党が13議席を占める。
「アラブ人に死を」と唱えるベングビール国家治安相が『ユダヤの力』(6議席)を率い、「パレスチナ人などいない」と言って憚らないスモトリッチ財務相が『宗教シオニスト党』(7議席)を率いる。
ネタニヤフ連立政権は極右2党なくしてありえないのだ。2党から抜けられたらネタニヤフは戦争の最高司令官でなくなるため逮捕収監される。
ネタニヤフはベングビール国家治安相とスモトリッチ財務相の意向に背けないのだ。映画では2人のパペットとなったネタニヤフ人形が登場する。
イスラエルの極右は日本のようなネトウヨではない。パレスチナ人を大虐殺しても痛くも痒くもないのだ。

我が家をイスラエル軍に破壊され、彼女は呆然と立ち尽くした。=3月、西岸ジェニン 撮影:田中龍作=
極右閣僚の2人が狙っているのはヨルダン川西岸(パレスチナ領)だ。ユダヤ人入植地の建設は目覚ましいスピードで進む。スモトリッチ財務相が予算をつけるからだ。
ベングビール治安担当相にいたっては「西岸にパレスチナ人の土地はなくなる」とまで嘯く。武力を使いながらパレスチナの民を追い出しているのだ。
極右にとっては聖なる地である西岸は譲れない。
ネタニヤフは思想的に極右ではないが、ガザが本格停戦になった場合に備えて、西岸(パレスチナ領)ですでに軍事行動を起こしている。シリア、レバノンに対しても同様だ。田中のカメラが現場を押さえている。
ネタニヤフが暗殺でもされない限り、この地域の戦火は広がる一方だ。死屍累々。親を失った子どもが泣き叫ぶ。逃げ遅れた子どもが爆殺される。
~終わり~
◇
BBCの映像で見る限り、ガザはイスラエルの攻撃が小休止し(あくまでも8日現在)、復興に向かいつつある。
逮捕逃れのために、どうしても戦争を続けたいネタニヤフは、停戦協定を破ってレバノン南部への攻撃を再開した。
パレスチナもレバノンも田中のホームです。現場で取材しないことには本当の惨状が伝わりません。





