ICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が発行され、お尋ね者の身となったロシアのプーチン大統領が18日、クリミア半島を訪問した。
18日はプーチンにとってクリミア併合記念日だ。今から9年前(2014年)世界を驚かせた電撃侵攻から3週間経つか経たない頃のことである。
この日、州都シンフェロポリのウクライナ軍基地にロシア軍が入城した。ジープが土埃を巻き上げながら基地に入って行った光景を思い出す。
翌19日、ロシア軍は黒海の戦略要衝であるセバストポリのウクライナ海軍司令部を陥れた。
その翌々日の21日、プーチンはパスポート発給の手続きを開始した。クリミア半島の住民にロシアのパスポートを発給するというのだ。手続きをする施設の前には長蛇の列ができた。
さすが元KGBの幹部である。人心を操る手際の良さに舌を巻いた。侵攻も電光石火だったが、併合するまでの戦術も稲妻のようだった。
一方でこんなことがあった。
ロシア軍はウクライナ空軍基地を完全包囲していたが、兵営にはまだ踏み込めていなかった。田中も兵営にいた。
ロシア軍は数回にわたって基地の司令官を呼びつけ、司令官に「これから(ロシアの)クリミアに忠誠を誓うよう」通告した。
司令官は「我々は国家(ウクライナ)に忠誠を誓っている」と答えた。
田中は広報官に「この先も投降しないのか?」と聞いた。返ってきた言葉に背筋が伸びた。
「投降しない。私はロシア系だけどね。軍人としてすべてをウクライナに捧げている」と。
ロシア軍に包囲されている他の基地でもウクライナ軍将校から同じ言葉が返ってきた。
プーチンはウクライナ軍の士気の高さを読み誤った。それが現在の苦戦につながっているのである。
現地でフィクサー(通訳兼案内人)を務めてくれていた女性は、「プーチンの支配下になって収入が1.5倍になった」と喜んでいた。
ところが今やクリミア半島は戦乱の地である。生活レベルは墜ちる所まで墜ちていることだろう。
帝国主義の時代ならともかく、21世紀の現代、戦争で繁栄を勝ち取ることはできない。
~終わり~
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