岸田首相がきょう21日午前(日本時間)、ポーランドから陸路キーウに向かった。
首相のウクライナ入りの是非についてのコメントは差し控えるが、ウクライナ国民が日本人をどう見ているのか。田中の乏しい経験をもとに話そう。
一年前のこの頃、ロシア軍は首都キーウの目前まで迫っていた。前線に行くまでは10カ所以上の検問所を潜らなくてはならない。
検問所のウクライナ軍兵士は、田中が日本人ジャーナリストであることが分かると、「Sir」と言って、最敬礼のジェスチャーを交えながら通過させてくれた。
ある前線の街では兵士が「オージャパン。クロサワ(黒澤明)、ハヤオミヤザキ(宮崎駿)」と叫んで田中を抱きしめてきた。
日本人ジャーナリストということで安心するのか。兵隊さんは本音で取材に応じてくれた。
ロシア軍との交戦が続くイルピンに住民がまだ取り残されている頃だった。兵士に「あと何人くらい残っているのか?」聞くと、彼は木の枝で1000と書いて天を仰いだ。
そして「Old」「Disabled」と言葉を絞り出すようにして言った。老人と障がい者が取り残されているのである。兵士はそれ以上言葉を継ぐことはできなかった。
開戦直後、街頭で知り合った地元テレビ局の記者は、SNSに田中とのツーショット写真をアップロードしてこう書き込んだ。
「Ryusaku Tanakaという日本の War correspondent(特派員) が来ていて、Tanakaはウクライナが勝つまで滞在する」と。
田中は「プーチンの戦争の行方を見届けるまでいる」と言ったのだが、尾ひれ背ひれが付いた。
いい話ばかりではなかった。日本人が国際情勢にウブであることは見透かされていた。
選良と言われる地位の人がロシアのプロパガンダを真に受け、エマニュエル・トッドなる歴史学者のインチキ本を信じ込んでいるのだから。
「ノーザン・テリトリー(北方領土)は取り返さないのか?」とあちこちで質問されたものだった。
自国の領土を守るため血を流しているウクライナ国民から見れば、日本人は何ともお人よしに見えたのだろうか。
~終わり~
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