
ウクライナ軍に迎え撃たれ吹き飛んだワグネル社戦闘車両の砲身。ワグネル社兵士の士気は低い。ロシア軍の苦戦を象徴するような光景だ。傍に立っているのはウクライナ軍兵士。=9月、ハリコフ州 撮影:田中龍作=
ロシア軍の侵攻により国土が戦場と化したウクライナから帰国すると、日本は「お花畑」な議論で沸騰していた。
自衛手段として叩かれる前に相手に先制攻撃を加えようというのだ。あまりにお粗末である。
仮に陸上の基地を叩けたとしても、相手は原子力潜水艦を6隻も保有しているのだ(2022年現在)。
地球の面積の7割をしめる広い海、しかも海中深くから戦略核ミサイルを撃ってくる原子力潜水艦をどうやって叩くのか。できっこないのである。

アパートの地下で過ごす住民にウクライナ軍兵士が差し入れに来た。=9月、オリヒフ 撮影:田中龍作
プーチン大統領が1週間で攻め落とすつもりだったウクライナが、ロシア軍の攻撃をはねのけ、プーチンを苦境に追い込んでいる。
ウクライナの強さの秘訣は守りだ。自らを育んでくれた大地を守り、子供を守る。民に共通するのは士気の高さである。
南部の前線で戦う兵士を取材したことがある。兵士はロシア軍によって壊滅させられたマリウポリの出身だ。志願兵である。彼は「故郷を解放するために兵士になった」と語った。
もちろん精神論だけで戦争は勝てるものではない。ウクライナの場合まるでハリネズミのように専守防衛に徹している。
代表格はミサイル迎撃システムである。ミサイル攻撃がある度に、飛んで来たミサイルの数と撃ち落とした数を発表するが、迎撃率は8割くらいであったように記憶する。迎撃率は高い。
同時多発で撃って来られた場合、迎撃漏れが生じ地上に被害をもたらすが、ロシア軍とて無尽蔵にミサイルを保有するわけではないので、いつか尽きる。

停電しても暖を取れ、スマホやPCに充電でき、インターネットに接続できる。無敵拠点といわれる施設が国内に3,700カ所もある。=11月、ブチャ 撮影:田中龍作=
もう一つの専守防衛は国際社会を仲間に引き入れたことである。これは頭の悪い政治家がひとつ覚えのように唱える「外交」ではない。
国際社会は大義ある方に味方する。ウクライナに援助が尽きないことを見れば一目瞭然である。陰謀論はさておき軍事援助、資金援助もあってウクライナの善戦が続く。
ロシアから踏まれても蹴られてもあの手この手で生き延びようとするウクライナの民に、国際社会は援助を惜しまないのである。
先に手を出せば、いかなる理由があろうとも侵略者となる。「敵基地先制ナンチャラ」をやってしまった国に世界は味方しない。
~終わり~
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右も左も「お花畑」の日本。窓に灯がともる暮らしを危うくしないために田中龍作は戦地のリアルをお伝えします。