開戦から37日目、4月3日。
「ロシア兵は家のドアを銃撃で壊して押し入ってきた。『殺すぞ』と私を脅し(カラシニコフを)顔スレスレで4発発射した。そして食料をはじめ家の中の物を全部持っていった」。
2日付の拙稿で、ロシア軍の略奪に遭ったブチャ住民の話を紹介した。
キーウ北東隣のブロバリィでは、ベーカリーのオーナーがロシア兵に銃を突き付けられてパン屋ごと奪い取られた事件があったとAFPが伝えた。
ロシア軍の兵站が滞っていることは米国防総省の分析などで知られているが、現場で実態を聞くと、顔をしかめたくなる。
太平洋戦争中の日本軍と同じではないか。兵站線を断ち切られ、食料が枯渇した日本軍は進駐先で略奪を繰り広げたのである。無理に無理を重ね、無残な敗戦となった。
兵站線は長くなるほど苦戦する。軍事のイロハだ。ロシアは開戦前から分かっていたはずである。
ウクライナでは軍や領土防衛隊の兵士たちがスーパーで食料品を調達する光景をよく見かける。開戦直後から光景は変わらない。
迷彩服を着てカラシニコフAK47を肩から下げた兵隊さんたちが、パンやチーズを買い物かごに入れる姿は、平和な日本にあっては想像もつかないだろう。
スーパーは開戦前と比べると品数は減ったが、供給量はまったく不自由していない(写真参照)。
ロシア軍が物流基地を砲撃したりしているが、別の供給ルートが幾筋も確保されている証左だ。
ウクライナ軍善戦の理由のひとつに、西側諸国から武器弾薬が潤沢に補給されていることがある。
食料供給を見る限り、国全体の「兵站」もしっかりしているようだ。
ウクライナ軍がイルピンでロシア軍に押し込まれていた頃、最前線から引き揚げてくる部隊の小隊長は田中にウィンクさえした。兵隊さんが満足に食べて行ける国は部隊の表情が明るい。
ショッピングモールがミサイル攻撃を受け、周囲の建物と共に大規模に破壊された。
ウクライナ軍の兵士たちがショッピングモールに入るのを見たロシア軍が、軍事施設が地下にあるものと勘違いしてミサイルを撃ち込んだとも言われている。
今回の戦争でウクライナに侵攻したロシア軍はスーパーなどで食料を調達したことがない。自軍の常識に照らし合わせてウクライナ兵の買い物を軍事行動とみなしたのだろうか。
~終わり~
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カードをこすりまくっての現地取材です。
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