原発は健康に重大な被害を及ぼす。その動かざる証拠が原発労働者の被曝だ。
東電・福島第一原発で事故の収束作業や九電・玄海原発で点検作業にあたり被曝した「あらかぶさん」(ニックネーム・45歳=北九州在住)は、2015年に白血病で労災認定を受けた。
あらかぶさんが福島第一原発で事故収束の仕事を始めたのは、苛酷事故直後の2011年11月からだ。
あらかぶさんは2016年、東電、九電を相手取って損害賠償裁判を起こしたが、電力会社は責任を認めていない。いかにも電力会社らしい。
「あらかぶさん裁判」の第16回口頭弁論が、きょう、東京地裁であった。次回の口頭弁論から各論に入ることが確認された。
原告のあらかぶさんは、原子炉建屋が水素爆発で吹っ飛んだ3号機のそばで、倒れたクレーンの解体・運搬作業に従事していた。
15分もすると首に下げていたアラームが「ビービー」とけたたましい音を立てて鳴ったという。
九電・玄海原発では配管を切断する作業で鉄粉が飛んだが、全面マスクではなかった。
原告のケースが示しているのは、電力会社や元請けの安全管理がズサンなことだ。
タングステン製の鉛ベストが足りず、原告は着用しないこともあった。あってもファスナーが壊れていて、養生テープで止めていたという。
放射線管理要員が現場にいないことが多かった。
原告側は被曝の具体的な数値を出して因果関係を立証していく。
あらかぶさん裁判の行方は、全国10万人の原発労働者の人道問題でもある。
~終わり~