持続化給付金 「消えた年金に似てきたね」

山井和則議員は申請から2ヵ月経っても入金のない事業者の声を電話で経産省に聞かせた。=5日、衆院第4控室 撮影:小杉碧海=

 コロナ禍で経営危機に陥った個人業者、中小零細業者に最高100~200万円が支給される はずの持続化給付金。

 瀕死の状態にある業者にとって命綱であるのに、申請から2ヵ月を過ぎても手元に届かない。

 経産省によると申請開始の5月1日からこれまでに150万人以上の申請があり、100万人以上の事業者に給付した。

 経産省の言うことをバカ正直に信じたとしても、50万人以上がまだ給付金を手にしていないことになる。

 給付金の遅滞を追及する野党議員のもとには500件を超える悲鳴が寄せられている。

 夫婦で事業を営む個人事業主が、野党議員の仲介で経産省に直接悲鳴をぶつけることができた。電話の音声を通してだが。

事業者と事務局とのやりとりを示すLINEの画面。生きるか死ぬかの瀬戸際にある事業者の問いに、事務局はマニュアル通りに答えているだけだ。

 苦情を再現するとこうだ―

5月1日に申請した。
     ↓
3日、「申請OKです」とのメールが事務局から届く。
     ↓
23日、「申請内容に不備があれば連絡します」とのメールが届く。
     ↓
6月4日、「不備があった」とのメールが届く。妻のマイナンバーが写真の登録をしていなかった、ということだった(原文ママ)。

 事業主は申請内容に不備があったのではないかと不安になって、ネットでいろいろ調べた。迷惑メールに落ちたりしているのではないかと思って、いつも見ていたという。

 彼は自分よりも遅く申請した人が給付金を手にしていることにも不信と怒りを強めた。

 経産官僚の回答はお役所答弁だった—

 申請にはいろいろなタイプがある。提出書類も違う。不備があるかないかでも違う。(その結果)審査にかかる時間が違う。    

 支払いが滞れば明日にでも倒産するところまで追い詰められている事業主にとって、あまりに悠長だ。拷問にも等しい遅さである。持続化給付金ではなくて「地獄化」給付金、「疑獄化」給付金と言われるゆえんだ。

 相談センターには200回かければ電話がつながるという都市伝説があるほどだ。100回以上かけると息切れしてくるため、たいがいの人は電話相談に応じてもらえないまま諦める。

事業者の苦情に答える経産官僚。こちらもマニュアル通りだった。=5日、衆院第4控室 撮影:小杉碧海=

 経産省がお金の給付事業を委託したのは、電通やパソナなどが設立した幽霊法人だった。これが元凶だ。

 お金の支給業務に不慣れなスタッフを従事させれば、届くはずのものも届かなくなる。

 消えた年金(2007年)を思い出す。紙の年金台帳を電子化する際、素人のアルバイトを使って適当に打ち込ませたのだ。

 当時の厚労行政をよく知る議員は「アレ(消えた年金)と似てきたね」と顔をしかめた。

    ~終わり~

     ◇
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