文・中山栄子
豊洲の問題は、やはり移転ありきの方向に行こうとしている。盛り土の経緯や費用、土壌汚染の実態など問題が次々と明るみに出る中、検証チームのトップが “このままで”と言い出した。
24日、地下ピットの溜まり水を視察した専門家会議の平田健正座長が会見後のぶら下がりで明かした。「4.5メートルの盛り土に戻すかと言ったらできない。ならば今の状態で監督していけばいい」。
この日、都は地下ピットを記者クラブ以外の報道陣にも公開した。公開されたのは7街区と呼ばれる卸売り棟だ。
地下階段を降り、ドアを開けるとそこは真っ暗闇。白濁した水が深さ10センチ以上、建物の床いっぱいに満々と湛えられている。まるで鍾乳洞だ。湿気がものすごく、じっとりと汗をかく。
歩くと波ができ、水が長靴に入り込む。微量でも毒物が混じっているかも知れないと思うと、気持ち悪さが先に立った。一週間前に同じ場所に入ったマスコミ記者が、増水ぶりに驚いていた。
地下空間を見た平田座長は、会見で考えを述べた。「地下の重機搬入口も使えない。盛り土はできない。盛り土しようとすれば建物を壊すしかない。今ある施設で安心・安全を(目指す)」。
もはや盛り土を断念し、溜まり水の成分が安全性の判断基準でもあるかのような物言いだ。
都による溜まり水の検査結果も発表された。溜まり水は地下水だ。ベンゼン、シアン化合物は不検出であること、その他、鉛やヒ素なども基準値以下であるという。「安全性については問題ないという結果だ」と平田座長は説明した。
都の説明によれば、溜り水の排水システムは10月中旬に稼動する予定だという。平田座長は「(地下水を)管理していくのが大前提。管理システムを動かせば減っていく」と、地下水が管理できるとの見通しを示した。
平田座長はまた「今後、地下ピットへの立ち入り、水の採取もご遠慮頂きたい」と宣言した。空気の成分が変わったりするからというのが理由だ。
この間、共産党や公明党など都議会の各会派が独自調査しているが、数値はいずれも都の検査結果より高くなっている。
水や空気の採取を希望する第三者が地下空間にアクセスできなくては、結果の公平性は見込めない。
「盛り土の経緯を説明させる」と見得を切った会見から、わずか一週間でこの変わりようだ。
地下水の成分は安全、地下水は管理できると胸を張る平田座長は最後にこう付け加えた。「あとは築地の皆さんが納得してくれるか。築地の皆さんの話を聞きたい」。
ことは「築地の皆さん」が「納得できるか」だけの問題だろうか?
近所の知人女性に豊洲の地下ツアーの話をした。「やだ、地下が水浸しとか。そんな所で大丈夫なの?署名(運動)か何かないのかなあ」。
「豊洲で扱った食品と分かったら、買い控えるかも」。彼女は腕組みをして考えこんだ。
~終わり~