文・写真 / 竹内栄子
看板が取り外され、工事用パネルで幾重にも封鎖された築地市場正門前。ときおり、ガシャーンと大きな音が響く。毎週2回、ここで築地での営業権を主張する仲卸業者らが販売会を行っている。
いつもなら数軒の仲卸業者が参加するのだが、今日は1社のみ。年末の繁忙期に入り、仕事が終わらないのだ。参加したのは今日から30日間、豊洲新市場を出入り禁止になった「ムラキ」だけだった。
「ムラキ」(村木智義社長)はこれまで、販売会を主導してきた。バリケードの外側から都職員に向かって呼びかけるのも村木氏の役割だった。その「ムラキ」ともう1社の仲卸業者が東京都から「12月1日より30日間、仲卸業務全停止」の行政処分を言い渡された。
理由は、築地市場にある店舗の現状回復をしないからだという。だが、荷物を置きっ放しにし、現状回復をしていない業者はいくらでもある。私物を撤去しない意志を示しているのは65社もあるというのだから、ムラキは明らかに反対運動をして目立ったゆえの、見せしめに遭っているのだ。
村木氏がトラメガを握った。「みなさんの応援あるかぎり続けます。長引きそうですが、私のライフワークになるかも知れません。決して引くことはありません」。
集まった50人ほどの支援者から「がんばれー」と声援が飛んだ。
いくら築地を残したいと言っても、実際の店舗は豊洲に移転している。そこで営業できないのだから商売は上がったりだ。
築地移転問題に詳しい1級建築士の水谷和子さんは、「この間の収入がないと大痛手。店を開けない間、従業員を他の業者に預けなければならない。だが、引き受けてくれる業者はまだ見つかっていない。取引先や家族にまで圧力がかかっている。反抗したらこういうのを食らうよ、と業者は萎縮している」と話す。
手助けすると行政処分6ヵ月だ、という噂もあるという。
築地市場は10月18日に解体が始まった。今日確認したところ、3棟ある茶屋と呼ばれる荷物集積所はほとんどが解体されてしまっていた。遠くの仲卸棟からも重機の音がする。
アスベストの飛散が心配されていたが、覆いが設置されたなどの情報もない。拙速と言えるほどピッチを速めて解体工事が行われているように見える。
都心に残された最後の広大な一等地を巡って、都議会公明党や自民党がネジを巻いている。年明けにも方針が明らかになるとの報道もある。東京都は強権政治で業者をねじ伏せて築地を更地化し、何を企んでいるのか?
~終わり~
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