文・竹内栄子
築地市場のアスベストが含まれた建造物を十分な対策も不明のまま、東京都が2月4日から解体することがわかった。
急きょ取り壊されることになったのは、カーブを描いた屋根を持つ水産仲卸棟だ。中央卸売市場のホームページには、この部分の解体工事は4月中旬からとある。だが、1月31日に更新された工程表では2月4日からに変更されていた。2ヵ月以上の前倒しになる。
築地市場の解体工事については、昨年7月に周辺住民向けの説明会が開かれた。だが、アスベスト問題に絞った住民説明会は一度も開催されていないという。
水産仲卸棟の屋根に含まれるアスベストはレベル3とされ、比較的軽度であるが面積は広い。都の資料によれば「手ばらしで丁寧に撤去」とのみ説明され、工事個所の密閉などはされないようだ。
果たして十分アスベスト対策がされているのか。不明な状態で解体工事を行うことに不安を感じる住民は少なくないだろう。築地の周辺は住宅地であり、保育園や小学校も点在している。銀座や新橋にも影響が及ぶとの説もある。
性急に水産仲卸棟の解体を急ぐ背景には、都が突然ブチ上げた国際会議場や高級ホテルを中心とした再開発案がありそうだ。今のところ否定されてはいるが、目玉はIR(カジノ)なのではないかとみられている。
水産仲卸棟を壊してしまえば、築地市場の中枢機能であった卸売の役割が失われると、都は理解しているのだろう。
匂いや粉じん、揺れなどで構造上の問題が指摘されている豊洲市場だが、まだ仲卸らがネを上げたわけではない。築地移転に詳しい専門家などは、気温が上がる今年夏には「もうやってられない」ということになるだろうと見ている。
横浜の赤レンガ倉庫群の保全に携わった建築家の今川憲英・東京電機大学名誉教授(構造エンジニア)によれば、築地の水産仲卸棟は「鉄骨に補強をすれば耐震は可能。文化財として保存することも、市場としても使用に耐える」という。
築地を改修して戻ろうという機運が高まらないうちに、夏までに建物を取り壊してしまえば、都と開発業者の勝ちだ。
小池知事が選挙公約に掲げた「築地は守る、豊洲は生かす」は跡地再開発案に全く反映されなかった。この調子では性急な解体工事で健康被害が出ても、都や小池知事が責任を取るとはとうてい思えない。
~終わり~
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