「11月7日豊洲市場開場!」麗々しく掲げられた看板の下で重機がうなりを上げ、作業員は まめまめしく 動いていた。小池都知事の延期表明を嘲笑うかのようだ。
田中はきょう、豊洲市場を訪れた。ガードマンに制止されたが「都民の税金を無駄遣いしたのだから見る権利がある」と言って、敷地の中に入って行った。建物の中にはさすがに入れなかった。
まずバカでかさに驚く。仲卸業者がセリ落とした魚を自分の店に持ち帰るには、広い都道の下をくぐらなくてはならない。
バカでかい割には一軒一軒の店舗は築地よりも狭い。マグロ包丁を使うのにも支障を来すというからお粗末極まりない。
鮮魚輸送用の大型トラックは荷台が横開きになっているのだが、豊洲市場の発着場は旧来型のタテ開き対応だ。
「市場内の輸送効率が悪すぎる」と仲卸関係者は憤慨する。
欠陥だらけの豊洲市場だが、最大の欠陥は環境汚染だ。東京ガスの工場跡地に建つ新市場の土壌には環境基準を大幅に上回るベンゼン、六価クロムなどの存在が確認されている。
最近では空気中に発がん性物質のベンゼンが存在することが分かった。
東京ガスの工場跡地を卸売市場にするには、「汚染区域」の指定を解除させる必要があった。
移転ありきの都は策を弄した。汚染が深刻とされる305ヵ所について、都は意図的に「汚染のない地区」として振り分けたのである。汚染隠しだ。
仲卸業者は「東京都は農水省に認可申請できない状態になっている」と指摘する。この状況では認可が下りるメドが立たないというのだ。
都が8月中に認可申請を出すという話があったため、仲卸業者が農水省に確認すると「どこからそんな話が出るのか?」と呆れていたという。
この問題に関しては国の態度はブレていない。東京都だけが先走っていたのだ。
息子があとを継ぐ仲卸の女将は言う。「止まってくれて本当によかった。目標は引っ越しが中止になること。汚染の問題が出るんじゃないかと不安のある所に若い人達を行かせたくない」。
~終わり~