「俺は一人殺したことがある・・・今日ゼロだったら帰さないからな」
暑中見舞いハガキ『かもめーる』の売り上げが少ないことを、局長から咎められ脅しあげられた社員が労働組合に通報した。関東のある郵便局で1週間前に起きた“事件”だ。
局長は5年前に首都圏で起きた過労自死に直接関わる人物である。脅しには十分過ぎるほどの威嚇効果があった。
日本郵政は安倍政権の労働法制緩和を先取りして、4月から成果主義を導入している。郵便局の売り上げを伸ばさねばならない局長が、局員(社員)に「もっと売れ」と過酷な労働を迫ったのである。
成果主義の行き着く先が冒頭の“事件”だ。
「頑張った人が報われるというが、潤うのはほんの一握り。ミスした労働者に対しては厳しい。(成果主義は4月にさかのぼって)8月からの給与に反映されるので労働者はいま戦々恐々としている」― こう語るのは郵政産業労働者ユニオンの日巻直映・中央執行委員長だ。
過労死裁判、雇い止め裁判、団交拒否・・・
「小泉・竹中」によって民営化が始まった日本郵政は、24件もの係争を抱える(※)。
「小泉・竹中」の劣化コピーである「安倍・竹中」は、民営化をさらに加速させ今秋の株式上場を目論む。
正規、非正規の労働者と遺族が、きょう、「株式の上場反対」と「全ての労働争議の解決」を求めて、日本郵政本社前で座り込みをした。(呼びかけ:郵政産業労働者ユニオンなど)
郵便局に勤務していた夫が過労死した2人の未亡人の姿もあった。
「この先過労死が増えるのではないかと心配」。
「一生懸命働いているのにまだ働かせるのか」。
2人とも安倍政権の過酷な労働政策を強く憂えていた。他人事ではないからだ。
株式の上場を誰よりも待っているのは米投資銀行2社といわれる。株式が上場されれば、内部留保を高めるためにリストラや成果主義は強化される。安倍政権が繰り出す労働法制の緩和とあいまって。
米金融資本に国民の資産を捧げる日本郵政には現代日本の縮図がある。
「安倍・竹中」政治がこのまま続けば、行き着く先には労働者の屍が累々と横たわる。
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(※)
郵政産業労働者ユニオンが把握する件数。
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