一生、不安定な派遣で働き、専門性があれば3年後に派遣切りに遭う。労働者を生き地獄に突き落とす「労働者派遣法」の改悪が大詰めを迎えている。
衆院厚労委は委員長職権であす派遣法の審議を再開することになった。12日にも採決との見方が広がる。
、これまで派遣は一業務につき3年だったが、 改正(悪)法案では人さえ変えればその業務は永久に派遣を使用することができる。
一方でこれまで期間制限のなかった専門26業務(※)は、3年後に雇い止めとなる。スキルが高いことから一つの会社で10年以上働いてきた派遣労働者も多く、不安が広がっている。
派遣法改悪の採決に反対する集会が今夕、国会内で開かれ、大勢の派遣労働者が参加した。立ち見も出るほどの超満員となった。(主催:労働弁護団)
法案に反対する山井和則議員(民主)があいさつに立った。
「法律で派遣切りをする。今までの日本の法律に労働者を解雇する法律があったでしょうか。そんなことを立法府が決める。そんなことが許されていいんでしょうか?」
山井議員はごく常識的なことを言っているのだが、常識が通じる国会ではなくなったということだ。
17人の派遣労働者が窮状を訴えた―
●熊本の工場で派遣切りに遭った男性(30代):
ルネサスの工場で間に4社が介在する偽装請負として働いた。収入は正社員の半分以下、派遣会社がピンハネした。
リーマンショックの時、今日居た人が明日はいない。いつ自分の番が来るんだろうと思った。
2009年2月に解雇された。生活保護も受けた。直接雇用を求めて裁判を起こしたが最高裁で棄却。使い捨てられたまま、いまだに救済されていない。
派遣切りを経験した当事者として、(派遣法改悪は)絶対許さない。こんなことは2度と繰り返させたくない。
●一般事務(56歳のシングルマザー):
専門26業務として派遣で働いているが、実際はOLの仕事。電話番、お茶出し、コピー取りもする。専門でないといえば解雇される。正社員になりたかった。不本意就労だ。
派遣元からは「3年後には辞めてもらう」と言われた。「その後は?」と聞くと、「優秀でないから残れない」と。「次の派遣先はあなたの年齢ではもう無理だ」と。
59歳で退職金の1銭も貰えずお払い箱になるだろう。
政府の言う雇用安定措置は、実際は使えない。全ては派遣先の胸三寸だ。
ピンはねされても、守ってはもらえない。これこそがモノという事だ。私の人生をないがしろにしないで下さい。モノ扱いにされてたまりますか。私の人生はモノじゃありません。
派遣先、派遣元そして厚労省、自民党、公明党は私の人生をないがしろにしないで下さい。絶対に廃案にして下さい。
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リーマンショック(2008年)の影響で職と住まいを同時に失う「派遣切り」が社会問題化した。これを教訓に労働者派遣は規制される方向に向かったが、自民党の政権復帰で元に戻った。派遣労働者を守るための規制は全廃されたに等しい。
安倍政権は派遣切りの悲劇を繰り返して、どうしようというのだろうか。
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専門26業務とは、「専門的な知識・技術」などを必要とする、派遣法施行令で定められた26種類の業務のこと。同時通訳、アナウンサーなど。
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