戦前に歴史を引き戻そうとする安倍政権に真っ向から挑む闘いが始まった。「特定秘密保護法は違憲だ」としてフリーランス記者たちが国を相手取り、「同法の執行停止」などを求めた裁判の第一回口頭弁論がきょう、東京地裁であった。
国民の知る権利を奪う特定秘密保護法に対する市民の関心は高く、大勢の傍聴希望者が訪れたため、抽選(傍聴券配布)となった。
クジ運の悪い筆者だが、きょうは運よく当選したため法廷に入ることができた。
原告43人のうち28人のフリーランス記者が法廷の原告席に座った。木野龍逸氏や寺澤有氏ら権力にとって手強い記者は最前列に陣取った。
原告43人はすべてフリーランスかインディペンデントメディアのスタッフだ。特定秘密保護法第22条2項は、「報道に従事する者」の取材の自由を保証している。
だがフリーランスは「報道に従事する者」と見なされない可能性が多分にある。フリーランスに対する政府の対応を見れば明らかである。
きょうは4人の原告が意見陳述した。トップバッターに立った於保清見さんは2011年6月に起きた玄海原発の再稼働にからむ「九電のやらせ事件」に触れた。事件は子会社の従業員が『しんぶん赤旗』に内部告発し、明らかになった。
於保さんは「秘密保護法が施行されれば、内部告発をためらう風潮が出てきて不正が表面化しにくい社会になる」として「(同法を)施行させてはならない」と訴えた。
真打の寺澤有さんは、特定秘密保護法第22条2項を引き合いに出した。上述したように同項ではフリーランスは報道従事者と見なされない恐れがある。
寺澤さんは「特定秘密保護法が施行されればフリーランスの取材活動、表現活動は壊滅的な打撃を受ける」と訴えた。
意見陳述の後、原告代理人の山下幸夫弁護士が、安倍晋三首相、谷垣禎一法相、森まさこ特定秘密保護法担当相、渡邊恒雄・同法諮問会議座長(読売新聞会長)の4人を証人申請した。
戦争に突き進む政治指導者がいて、売上のために軍国主義を鼓舞する新聞経営者がいる。昭和初期の風景がよみがえるようだ。
フリーランス43人が起こした裁判は、「軍国亡者」との闘いでもある。