ウクライナ本土からクリミア半島への入り口にあたるチョンガル。半島最北端の「玄関」は前線基地と化していた。ロシア国旗を立てたカーキ色のテントやプレハブが並ぶ。民兵の兵舎だ。
炊事施設もあり煮炊きの香りが漂う。ざっと見まわすと“駐留”している民兵は100人くらいだろうか。そのうち20人はトレンチ(塹壕)を掘っている最中だった。もしウクライナとクリミアが交戦した場合(可能性は低いが)、ここが最前線となる。
民兵は一瞬たりとも自動小銃を手放さない。基地には緊張感がみなぎっていた。撮影不可の対象こそ撮りたくなるのがジャーナリストの性だ。イチかバチか。ロシア人通訳を通して基地の司令官と交渉したところ条件つきでOKが出た。
チェックポイントで「車両を検問している場面につき撮影を許可する」という条件だった。「カメラを右に左に振ってはならない」と釘をさされた。左右(西と東)を写すと地理的環境が分かるからだ。
チョンガルのチェックポイントには長距離トラックや乗用車の長い列ができていた。民兵が車を一台一台止めて荷物とドライバーのパスポートをチェックする。
鉄道、空港、道路。ロシア軍とロシア系民兵は交通機関をすべて押さえた。民間用のシンフェロポル空港は、住民投票翌日の17日までモスクワ便以外は運航休止となっている。
欧州安全保障協力機構(OSCE)の停戦監視団も選挙監視団も入れない状況だ(※)。議会、州政府ともに親ロシア派が圧倒するなかで実施される住民投票は恣意的な結果となるだろう。
ロシアは強大な軍事力を背景にクリミアを一気に独立、併合へと持って行く構えだ。
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欧州安全保障協力機構(OSCE)の停戦監視団は8日、クリミア半島に入ろうとしたところを、ロシア系武装集団に威嚇発砲された。選挙監視団については選挙そのものを無効としているため派遣しない。