平成の治安維持法ともいわれる秘密保全法(特定秘密保護法)が、早ければ今週金曜日(25日)にも国会に上程されそうだ。
“国民の知る権利が大きく制約される恐ろしい法律が通ったら、たまったものではない” 危機感を抱く野党議員たちがきょう国会内で政府に秘密保全法の問題点を質した。政府側は内閣官房、防衛庁、外務省、警察庁、総務省の中堅官僚が出席し答弁した。
「特定秘密を指定するのは行政の長」
「何を特別秘密(現在41万件)にしたのかは表示しない」
「更新に制限はない(無期延長)」
「秘密事項に関わる記録の破棄も公表しない」……
恐るべき言葉が内閣官房・情報調査室の橋場健・参事官の口からポンポンと飛び出した。法案を主管する内調官僚の迫力だろうか。詰めかけた市民からどよめきが起き、それは緊張へと変わった。立ち見も出るほどの満席で会場は立錐の余地もない。
「何が秘密か公表されないのでは(公表されずに処罰されるのでは)、罪刑法定主義にもとるのではないか?」野党議員の質問に政府側から明確な回答はない。「暗黒だ」のヤジも飛んだ。
国会議員も処罰の対象となるようだ。山田太郎議員(みんなの党)が次のように質問した―「国会議員の国政調査権は権利というより義務として与えられていると考えている。(知り得た秘密を)有権者に報告した場合、どのような制限を受けるのか?」
内閣官房・橋場参事官の答弁は衝撃的だった―「政府内部の役職を務める国会議員(大臣、副大臣)が特定秘密を漏えいするような場合……この法案による処罰の対象となる」。
「三権分立の中で行政の権限が極めて突出している!」野党議員が声を荒げたが、橋場参事官は動ずる気配もない。
橋場参事官は、「この法案では都道府県警察と契約業者の職員も対象となるから相当数の職員が適正評価の対象となる」と続けた。国家公務員だけでなく、県警や国の契約業者、県警の契約業者とその家族と同居人までもが対象となるのだ。適正評価とは特定秘密を扱う者の身辺調査だ。
司会の山田太郎議員は「現行の秘密取り扱い者委託では、特別管理秘密を取り扱う職員(国家公務員)は6万5千人。問題は大きい」と話し、対象者の範囲がとてつもなく拡大することに驚きを隠さなかった。恐ろしいほどの数の関係者に「秘密の網」がかけられるというわけだ。
国会議員までを処罰の対象とし、公務員はじめ委託業者、地方の県警職員を重罰で縛る。法案の概要は「安全保障」のための情報保全だ。
橋場参事官は「TPPや原発は対象にならない」と明言した。都道府県警がなぜ出てきたのか? 秘密の網を地方にまで拡大して守りたい官僚の利権とは何か?
この法律が大手を振って歩き出した時、官僚による独裁国家が誕生する。きょうは中堅官僚の前に、国会議員が小さく見えてしょうがなかった。
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