原発事故で被災した人々を支援する基準と内容を規定する「原発事故子ども・被災者支援の基本方針」。もっとも早ければあさって(11日)にも閣議決定されそうだ。
だが、基本方針は内容があいまいであるばかりか、支援の枠組みからこぼれる被災者があまりに多い。問題だらけだ。
これでは健康に生きてゆけない。被災者たちがきょう、復興庁に方針を見直すよう申し入れをした。復興庁を訪れたのは福島市から札幌市に自主避難した中手聖一さん、郡山市から静岡県富士宮市に自主避難した長谷川克己さん、福島県三春町に住む武藤類子さんら。
復興庁は阿部英樹・政策調査官らが対応した。中手さんらは434人の連名で「基本方針見直し」の要望書を阿部調査官に手渡した。434人のうち200人は避難者で、234人は汚染地域に留まっている。避難者、在留者ともに福島県の内外を問わない。
支援対象区域は福島県内の33市町村が基本だ。準支援地域として線量の高い福島県内外の自治体も含まれるが、役所の裁量任せだ。支援を受けられなければ、住宅や医療にかかる費用は自分で賄わなければならない。「まやかし」と批判されるゆえんだ。要望書を出したのは434人だが、100万人に近い数十万人が影響を受ける。
基本方針案で見直しを求めたのは以下の3項目(要点)だ――
・支援対象地域を年間追加線量1mSvとし、合わせて福島県全域を対象地域として下さい。
・避難者支援は帰還への支援に偏重することなく、新規避難者や避難継続者及び避難希望者への住宅、移動、就学、就労などの支援を充実させて下さい。
・健康診断と医療については福島県内の枠内に限らず、必要とするすべての被災者を対象として生涯にわたって実施して下さい。
中手さんらが要望書を復興庁に手渡したところで、メディアは退出させられた。中手さんによれば「基本方針を(少しでも)見直すという回答は復興庁から得られなかった」という。
「このまま閣議決定させることは到底認められない…(中略)…(お金の)余裕がある家庭の子どもは被曝を避けることができるが、(お金の)余裕がない家庭の子どもは被曝を重ねている。本来の権利である被曝を避けて生きる権利が経済的な理由により格差を生んでいる」。中手さんは唇を噛みしめながら話した。