「“あれは事故だ”は言い訳にならない」。放射能汚染水を海にタレ流し続ける東電と東電経営陣を、福島の住民がきょう、公害罪違反で福島県警に告発した。
告発されたのは(被告は)勝俣恒久会長、武藤栄副社長(いずれも事故当時)、広瀬直己社長ら、旧・現経営陣32人と法人としての東京電力。
告発したのは福島県三春町の武藤類子さんら3人。武藤さんは福島原発事故で東電幹部や政府役人を業務上過失致死傷罪により集団告訴した原告団の団長でもある。
告発状を要約すると―
1)東電は汚染水を貯蔵する応急仮設タンクを強度と安全性を兼ね備えたタンクに早く切り替えなければならなかった。タンク周りの堰の排水弁を止栓し、タンクから漏えいが起きても堰で食い止めなければならなかった。
2)東電は、1日1,000トンもの地下水が原子炉建屋地下に流れ込み、メルトダウンした核燃料に触れて放射能汚染された地下水が海に漏えいすることを認識していた。2011年6月17日、政府から遮水壁設置の検討を求められたが、中長期対策として先送りした。
東電は業務上必要な注意をこうして怠ったために有害な放射性物質を大量に含んだ汚染水を海に流出させた。事業活動に伴って人の健康を害する有害物質を排出し、公衆の生命または身体に危険を生じさせた。公害罪法第3条違反にあたる。
1)、2)ともに安全管理よりもカネを優先させた結果だ。いかにも東電らしい。堰の排水弁を止栓しなかったのはズサンの一言に尽きる。
遮水壁の設置を先送りしたのは、建設費用に1,000億円もかかるためだった。すでに1兆円余りの赤字を計上していた東電は債務超過になることを恐れたのだった。
「地球環境を守るための問題を東電のエゴイスティックな理由でさぼった。地震・津波もおカネを優先して対策を講じなかった。それと全く同じ構図だ」。告発団の河合弘之弁護士は指摘する。
昨年6月、原告団は東電と政府役人を業務過失致死傷で告訴した際は、検察庁に告訴状を出した。だが今回は福島県警である。河合弁護士は告訴が1年余りも棚ざらしになっていることに触れた。そのうえで「東電に何をやっても許されるという慢心を与えてしまった。検察庁、恃(たの)むに足りず」と喝破した。
告発状は最後にこう結んでいる―
捜査当局は一刻の猶予もなく現場検証と関係書類の押収捜索をして、遮水壁の建造を先送りした責任者らの逮捕など強制捜査に踏み切り、事案の真相を明らかにすべきである。