4月1日、改正労働契約法が施行された。これにより、同一の使用者(会社)との間で有期労働契約が5年を超えて反復更新した場合、労働者の申し込みにより無期労働契約となる。
無期労働契約とは期間の定めのない雇用である。業績が悪化すれば、すぐにでも従業員を解雇したい企業にとっては、一見厄介な法改正だ。だが「上に政策あれば、下に対策あり」。企業は上手な抜け穴を見つけた。「雇止め」である。
法改正で有期契約労働者がどのような影響を受けるのかを考える集会が8日夕、都内で開かれた(主催:日本弁護士連合会)。労働契約法の改正に泣く労働者の声を聞いた――
コーヒーチェーン店でアルバイトとして4年間働いてきた女性(20代)は、店長から「3月で契約更新できない」と口頭で言われた。3月末で雇止めである。労働契約法改正前は、3ヵ月ごとに無期限で契約更新できていた。
「生活が突然壊れたようだった。長く働いている人からクビにするのは納得できなかった」。女性は切々と話した。静かな口調の中からも怒りが伝わった。
彼女はユニオンに入り、会社側と交渉した結果、とりあえず6月15日までは契約がある。
大阪の男性(40代)は空調機メーカーの製造ラインで20年間働いてきたが、雇止めに遭い裁判闘争を続けている。
男性は業務請負会社の社員として働いていたが、勤め先のメーカーが大阪労働局から「偽装請負を是正せよ」と指導を受けた。メーカーはやむなく男性を直接雇用した。だがこれがアダとなった。有期雇用だったのである。
「偽装請負の時は無期限で働けたのに、直接雇いとなったら更新してもらえない」。男性の言葉が法の不備を物語る。
「正規社員と同じ仕事をし、正規社員以上に働いて、正規社員に仕事も教えた」。彼は無念そうに語る。『同一労働、同一賃金』などという概念は、経営者の頭の中にないようだ。
今や全労働者の3割、1800万人が有期契約労働者だ。彼らの74%は年収200万円以下で暮らす(厚労省2011年発表)。
多くの青年が結婚もできず家庭も持てなければ、少子化にも歯止めがかからない。国力は衰退する一方だ。額に汗する勤労者が報われない社会は、土台から壊れている。