TPPに前のめりの安倍首相が、来週中にも交渉参加を表明するとの見方が広がる。TPPに反対する医療団体、労働組合、農業団体などが国会前できょう座り込みをした。
昨年末の総選挙で自民党議員の大半は「TPP反対」を唱えて当選した。彼らは「TPP参加の即時撤回を求める会」(自民党国会議員240人=2月22日現在)としてTPPに反対する姿勢を崩していない。だが、あくまでも表向きで政治生命をかけるような議員はほとんどいない、という。
農民連の白石淳一会長は議員会館に向かってトラメガで叫んだ。「自民党、私たちは公約違反を許さない。TPP参加反対の行動をとってほしい…」。
マスコミはTPPがあたかも農業問題であるかのように喧伝する。とんでもない。あらゆる分野に及ぶ。地域も破壊し庶民の命綱とも言える国民皆保険さえ脅かすのである。
座り込みのメンバーの中に市町村役場の労働組合員がいた。「TPPで農業のみならず中小の業者もやられる。公共工事を地元業者に発注しようものなら、アメリカの建設会社から(ISD条項にもとづき)裁判に持ち込まれる。地域経済が潰れたら役所も潰れる」。彼が座り込みに参加した理由だ。
『TPPは復興の妨げ』と太字で書いたムシロ旗を持ちこんだ男性もいる。「被災地は農林業が基幹産業。それがTPPでダメになる。復興の公共事業にもアメリカの建設会社が入ってくるようになる。何とか立ち直ろうという時にTPPに入られたら心が折れる」。男性は怒気を孕ませて語った。
医療団体の幹部は「TPPで混合診療と病院の株式会社化が拡大(現在一部で実施)すれば、健康保険はなし崩しにされる」と危機感を強める。
国民皆保険を壊して米国の保険会社に日本国民の個人資産を流し込むのが、米国の狙いだ。TPPに符号するように経済財政諮問会議が「労働法制の緩和」が要求していることからも分かる。もっと簡単に従業員のクビを切れるように法改正してくれというのだ。
職を失う労働者が増え、また正社員が収入の少ない非正規社員になれば、国民健康保険料を払えなくなる。国保財政は名実ともに破綻する。
「国民皆保険は(TPPと労働法制緩和により)どっちからもやられるように なっている」。前出の医療団体幹部は諦めとも怒りともつかぬ表情で語った。