細野豪志環境相(当時)が全国を行脚しながら「皆さんが瓦礫を受け入れて下さらないことには被災地の復興はないんです」と絶叫し、新聞・テレビは「みんなの力でがれき処理」と高らかに謳いあげる……政府とマスコミあげてのあの狂騒曲はいったい何だったのだろうか?
環境省は広域処理が必要な宮城県と岩手県の瓦礫の量を当初400万トンと見積もっていたが、先月25日大幅に下方修正し69万トンとした。6分の1である。約1兆円(9900億円)もの莫大な予算をつけてゼネコンに儲けさせるために必要以上に大きく見積もっていたのだろうか。
広域処理が必要な瓦礫は両県からなくなりつつあるのである。宮城県はすでに、3月31日で瓦礫の搬出を終了することを決めている。岩手県も大方は3月31日までに搬出を終了するのだが、富山、秋田、大阪へは4月1日以降の搬出も検討している。
「膨大な税金の無駄使いはなかったのか?」「もう広域処理は止めるべきだ」…瓦礫受け入れ自治体で反対運動に携わっている全国の住民らがきょう、参院会館に集まった。瓦礫問題の最終決着に向けて情報交換し、今後の対策を練ろうというのだ。
富山県の代表は「(岩手県には)もう瓦礫がないんじゃないのか?」と役所に問い合わせた。返ってきた答えは「環境省と打ち合わせ中」だった。
男性は「役所が地元の弁護士たちに訴訟を引き受けないようにプレッシャーをかけている」と明かした。必要のない瓦礫を受け入れ、住民から損害賠償請求の訴えを起こされた北九州市の二の舞は避けたいのだ。瓦礫を押し付けられてどう対応してよいのか分からず、右往左往している地方役人の姿が目に浮かぶ。
大阪では瓦礫の受け入れに抗議した大学教員が不当逮捕される事件まで起きている。
「国は論点ずらしのために“警察と住民”、“反対派と賛成派”にどつき合いをさせた。汚染者の東電と国を追及できるようになるまで締めあげなければならない」。大阪の代表は厳しく指摘した。
広域処理で破たんした環境省だが、とんでもない地元処理計画を福島県で進めているようだ。特措法に基づき国が責任を持って処理しなければならない指定廃棄物(8,000ベクレル/kg以上)を鮫川村で焼却処分しようというのである。焼却には廃棄物処理法の適用を受けない小型焼却炉を使うそうだ。
広域処理で失敗した中央省庁が、今度は「法律の抜け穴」を使って地元処理をする。地元では猛烈な反対運動が起きており計画は難航しそうだ。
『絆』が通用しなくなったら今度は何を出してくるのだろうか。「漢字一文字で表して下さい」、次の記者会見で石原伸晃環境相に聞いてみたい。
《文・田中龍作 / 諏訪都》