早ければ秋にも総選挙との観測が飛ぶなか、ある民主党議員の陣営が西武線の駅頭で有権者にチラシを配っていた。『日本は脱原発でいくべきだ!』と勇ましいタイトルが人目を引く。
ところが肝心の中味は逆だ。『とはいえ現在54基ある日本の原発再稼働を今後全て禁止するのは現実的ではありません。電力不足が日常茶飯事になれば…』とくる。明らかに原発維持派の論理である。羊頭狗肉も甚だしい。それでも見出しだけ読んだ人は「この政治家は脱原発派だ」と思うだろう。
「(候補者)皆が脱原発って言い出すんじゃないか」と危惧するのは『脱原発市民選挙イニシアチブ』発起人のマエキタミヤコさんだ。前述した民主党陣営のチラシは、マエキタさんの不安を先取りする。有権者を欺くことにかけては、民主党の動きは実に素早い。
民主党主流の複数の方針をまとめると「2030年~2050年までに原発をゼロにする」ことになる。国民を馬鹿にするにも程がある。それまで電力会社は原発を再稼働し放題で核廃棄物を出しまくるわけである。何が「脱原発」なのだろうか?
脱原発に詳しい作家の田中優さんは、真の脱原発候補と偽物を見分ける方法として次のように話す。「“すぐに脱原発”と言うはず。“核燃料サイクルは必要”などと言ったりしない」。
青山学院大学の小島敏郎教授(元環境省)は、野田政権のマヤカシを次のように指摘する―
「もんじゅの実用化は2050年。2030年(~50年)に原発をゼロにするのだったら、動かす必要はない。もんじゅにどうして予算をつけるのか?すぐに論理矛盾の馬脚を現す。(民主党のウソに)気をつけなければならない」。
もんじゅは世界中のペテンと無駄と危険を一身に背負ったような存在である。野田首相や細野環境相が原子力規制委員長に就任させたがっている田中俊一氏は、もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の副理事長だった人物なのだ。
先月1日、民主党の「脱原発ロードマップ」の議員たちと首都圏反原発連合との意見交換会が行われた。反原連のメンバーから「原子力規制委員会」の人事について問われた民主党議員は凍り付いた。
そして出席した6人中4人までもが「党内の議論を見極めたうえで」と答えた。4人のうちには菅前首相も含まれている。
どんな政権が誕生しても原発を動かせるようにと霞が関が仕組んだのが「原子力規制委員会」の人事なのである。政権与党の国会議員がそれを知らないはずがない。この人事に反対できずして「脱原発」はないはずだ。
2009年の総選挙で「消費税は上げません」と言って政権の座についておきながら、国民に信を問うことなく、いとも簡単に消費税増税したのが民主党だ。 こんな政党に二度と騙されてはならない。
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