大飯原発再稼働に向けた政府の動きが着々と進む。野田政権は来週にもゴーサインを出しそうな気配だ。「再稼働を許してはならない」、危機感を募らせた市民たちが29日夕、首相官邸前で抗議の声をあげた。
集まったのはTwitterや Facebookで呼びかけ合ったサラリーマン、自営業者、主婦、フリーターたちだ。組織による動員ではない。仕事を終え電車を乗り継ぎ、原発再稼働を決定する最高権力者の邸の前に駆け付けた。
組織が主催する集会とは違って、希望者が次々とマイクを握った。「●●団体」の「○○」さんなどと言った紹介はない。
スーツ姿の男性(40代・都内コンサルタント会社経営)は、中小企業庁(経産省)で開かれたセミナーの帰りだ。「大人たちが子供を守らなければ、国は瓦解する。原発を止めなければ日本は崩壊する」。福島県出身の男性はノドが張り裂けんばかりに絶叫した。両親はまだ故郷に住んでいるという。
「なぜこれから生まれてくる子供たちも被曝しなくちゃいけないんですか?いい加減なテストで原発を再稼働させないで下さい。子供をこれ以上被曝させてはいけません。放射能で汚れた土の上で遊ばせてはいけません」。声を振り絞って訴えたのは、杉並区から足を運んだ女性(50代・自営業)だ。
時間が経過するにつれ人は増え続けた。行列は長くなるばかりだ。参加者は最終的に200人を超えた。出動した警察官は交通整理に追われた。「歩道ですので人が通れるようにして下さい」、「はい、車が出ますので空けて下さい」……
「原発反対を叫ぶのは極左」と体制側は30~40年かけて国民の頭に刷り込んできた。たしかに原発を自らの運動に利用してきた左翼もあった。
だが福島の事故を機に普通の人々が「原発は危険だ」と気付き、それを表明し始めた。29日は市民たちが最高権力者に向かって「原発再稼働反対」を力の限り訴えた日となった。
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