【放射性がれき・京都編】 細野環境相 市民とフリー記者の質問に噛み合わない答え

経文をもじった京都らしいノボリがはためく傍、瓦礫の受け入れを求めて懸命に訴える細野環境相。=31日午後、京都駅頭。撮影:田中龍作=

経文をもじった京都らしいノボリがはためく傍ら、瓦礫の受け入れを求めて懸命に訴える細野環境相。=31日午後、京都駅頭。撮影:田中龍作=


 「被災地瓦礫の受け入れ」を求めて全国行脚を続ける細野豪志・環境相は31日、京都を訪れた。いにしえの都で細野大臣を待ち構えていたのは激しい怒号だった。

 京都洛中をサラサラと流れ市民や観光客の心をいやす疏水は、琵琶湖から引き込まれている。琵琶湖と京都が分かちがたい関係にあることは、関西人の共通認識だ。もし京都市が瓦礫を受け入れて燃やしたら、目と鼻の先にある琵琶湖が放射能で汚染される可能性が極めて高い。

 「近畿の水がめ琵琶湖を放射能から守れ」。京都はじめ大阪、滋賀などから危機感を募らせた住民200人余りが、演説会場の京都駅頭に集結した。

 「皆さん、落ち着いて聞いて下さい。私は皆さんの話を聞くので、皆さんも私の話を聞いて下さい…」。全国各地で住民の強い反発があることを身を以て知る細野大臣は、異例の「お願い」から切り出した。

 会場の市民から怒号があがる。「私たちをこれ以上被曝させるな、人殺し」「京都を守れ」……。

 それでも細野大臣が演説を続けようとすると、「帰れコール」となった。音量の大きなマイクに持ち替えたが、細野大臣の声は怒号に掻き消されてほとんど聞き取れない。ティッシュペーパーが大臣に向けて飛んだ。

 この日の京都は真冬に戻ったかのような冷たい「比叡おろし」が吹き付けていたが、それも忘れてしまうほどのヒートアップだ。

 「残念ながら聞く耳を持たない方がいらっしゃるので、今日はマイクを使っての説明を止めます」。細野大臣は演説を諦めた。

 「瓦礫の押し付け」に政治生命を賭ける細野大臣は、対話するために群衆の中に入っていた。警察のSPや環境省の職員が大臣の前に立ちはだかり、緊迫した空気が張りつめた。

 伏見区の青年(30代・会社員)が進み出た。「(政府は)セシウムしか公表していないじゃないですか!」。

 細野大臣は「セシウムを計れば他も分かる」とかわそうとしたが、青年は「α(アルファ)線もγ(ガンマ)線も出てますよ」と畳み掛けた。大臣は何も答え(きれ)ずにその場を去った。

 筆者(諏訪)は追いすがり質問を浴びせた。「セシウムの測定時間は何分ですか?」と。セシウムの測定時間は、短いと検出数値が不安定になるからだ。一般的には2時間以上測定しないと安定した数値が出ない。

 細野大臣は「ベクレルで計っていますよ」と、まるで噛み合わない答えを返した。

 筆者が同じ質問を繰り返すと大臣は「計る機械によって違うのでお答えできません」と答え、お茶を濁した。筆者は食い下がった。「一例でいいからお答えください」と。大臣はまたもや無言で立ち去って行った。

 「被災地を助けて下さい。5年も10年も被災地の人たちをそのままにするんですか…」。細野大臣はひたすら情に訴えるが、科学的な説得力に著しく欠ける。

 「政府の発表することは信頼できない。京都で瓦礫を受け入れたら恥ずかしい」。乳飲み子を連れた母親(京都市内在住)がいみじくも言った。

 細野大臣が迎えの車に逃げ込むように乗り込むまで、「帰れコール」は止まなかった。
                 (文・諏訪 京)
 ※
筆者は『田中龍作ジャーナル』の新人記者で原発と環境問題を主に担当します。
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群衆の中に入り市民と対話する細野大臣(左端・横顔)だったが……。=撮影:田中龍作=

群衆の中に入り市民と対話する細野大臣(左端・横顔)だったが……。=撮影:田中龍作=

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