「ジャストインタイム」。需要がある時だけ製造するトヨタ方式をまざまざと見せつける大会だった。豊田市の矢作川河川敷で11日、開かれた「トヨタ総行動(集会・デモ)、主催:愛知県労働組合総連合」にトヨタ本体の労働者や下請け企業の従業員は数えるほどしか参加していないのだ。皮肉というほかない。
祝日で土曜日であるにもかかわらず、トヨタが操業しているからである。千社は下らないといわれる下請け工場も稼働しなければならない。労働組合のある下請け企業だけでも522社ある。その従業員総数は28万人。オバチャン3人、夫婦2人だけの“家内制手工業”は含まれていない。
車軸やシフトレバーを製造する3次下請け企業に勤める青年(24歳)は7日間、連続夜勤だ。東日本大震災やタイの洪水による生産の遅れを取り戻すために下請け工場はシャカリキなのである。
「労働基準法も何もあったものじゃない。体を壊すのではないかと心配だ」。青年の父親は気を揉む。
「ノルマ、プレッシャー、パワハラでうつ病になる労働者が多い。それでも、うつ病は労災が降りない」。後輩たちからの相談が絶えないという、1次下請け工場のOB(60代)は眉間にしわを寄せた。
トヨタ総行動には自治体労働者や近隣の地場産業従業員など約1千人(主催者発表)が参加した。名古屋市の印刷会社で働く男性(60歳)は「愛知県はトヨタが変わらないと労働者の環境は変わらない。賃金相場の形成に影響が大きいから」と話す。
消費税が上がれば「戻し税」で国から巨額の金が転がり込む。一方で増税分は下請け企業にコスト削減を強いる。どうなろうともトヨタがボロ儲けするシステムがこの国にはある。こうして貯め込んだ内部留保は13兆円に上る。
それでもトヨタ経営陣は賃上げに応じるつもりはない。「労働者と下請けは生かさず殺さず」がこの先も続く。
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