菅首相の気慰みで発足した東電福島原発事故・調査検証委員会。畑村洋太郎委員長が4日、日本外国特派員協会で記者会見を持った。畑村委員長の調査にかける思いは、予想通りお気楽だった。
検証委員会に法的な権限はないことから最初から期待はしていなかった。だが、事故調査検証委員会は4つの専門家チーム(※)から成り、関係者数百人から聞き取り調査をする。大がかりなものだ。6月7日の初会合はマスコミも大々的に取り上げたのでご存知の読者も多いことだろう。
筆者は次のように質問した―
「東電福島原発をめぐっては、原子炉の設計に携わった人たちがかねてから危険性を指摘していた。今回の大事故の予兆となるトラブルが幾度も起きていた」。
「にもかかわらず東電は聞く耳を持たず、政府(原子力安全保安院)はトラブルを捻り潰してきた。マスコミはそれに手を貸した。この構造は今も変わらない。検証委員会がいくら良い報告書を出しても“空念仏”に終わるのではないか?」
畑村委員長の答えには口をアングリとさせられた―
「私たち皆が空念仏になるのではないか、と心配している。かといって調査権を確立して罰則を与えれば本当の調査はなされなくなる」(調査対象者が真実を話さなくなる)。
畑村委員長は東大名誉教授だけあって世間の穢れを知らないようである。ウソなど朝飯前の東電や情報隠しが本来業務の保安院が、罰則なしで本当のことを話すと思っているのだろうか。
ドイツテレビの女性ディレクターのもとには本国から「なぜ(東電の担当者を)刑事罰にかけないのか?」との問い合わせが相次いでいるという。問い合わせを受ける形で彼女は質問した―
「責任の所在を明らかにするためにも処罰者が出ることもある位のスタンスで調査に取り組んでもよいのではないか?」
畑村委員長の答えは筆者の質問に対してとほぼ同じだった。要はそこまで真剣にやるつもりはないと言っているようなものだ。
畑村センセイが記者会見した4日、九州電力玄海原発の地元玄海町では岸本秀雄町長が原発の運転再開を認めた。佐賀県の古川康知事も同様の方針だ。点検のため停止中になっている全国の原発に与える影響は大きい。
安全基準が見直されたわけではなく、チェック体制も「福島」以前と何も変わっていない。玄海原発は福島第一原発と同じように原子炉が老朽化している。真実は何ひとつ明らかにされないまま、事故が繰り返される恐れは多分にあるのだ。
畑村委員長は調査報告書を次世代に残したいというが、次世代が死に絶えたり畸形になったりしたら何のための報告書になるのだろうか。