「東電情報隠し」の裏で進行する放射能汚染 ~その2~

記者団に連日詰問され疲れ切った様子の広報担当者。(16日、東京電力本店。写真:筆者撮影)。

記者団に連日詰問され疲れ切った様子の広報担当者。(16日、東京電力本店。写真:筆者撮影)。

 福島原発事故をめぐる東電の発表姿勢は先ず「最善のシナリオ」を提示することだ。

 16日午前の記者会見では、朝から白煙が立ち上る3号機について記者団の質問が集中した。3号機は14日、水素爆発を起こし建屋が吹き飛んだ代物だ。満身創痍と言ってもよい。

 使用済み核燃料プールの水温上昇について聞かれた広報担当者の回答が東電の姿勢を象徴している―

 「使用済み核燃料プールは水深7~8mの水が確保されている。7~8mの水が全部蒸発するほどの熱量を核燃料が持っているか、というとはっきりしない(中略)・・・3号機の使用済み核燃料プールに保管されている核燃料が、原子炉で使用され核分裂していたのは昨年の6月18日以前。その後、定期点検で取り外され9か月間ほど冷却されているので・・・」

 広報担当者は「長期間冷却しているのでプールの温度は上がらない」と言いたげだった。

 すかさず筆者は問うた。「東電はいつも最善に触れた場合の発表ではないか。ところが実際に起きていることは最悪の事態だ。核燃料が露出した場合どうなるのか?住民に対して国民に対して説明して下さい」と。

 広報担当者は専門用語を織り交ぜながら説明した。最後には「放射性物質が排出される」と自身の口で語った。

 3号機は間もなく核燃料プールの水を冷却できないことが分かり、自衛隊の大型ヘリが空から散水することになった。だが上空の放射能レベルが限界値を超えているため中止となった。

 打つ手なしとも言える。放射性物質が排出されることも覚悟しなければならない。繰り返して言う。東電が「最善のシナリオ」を発表しても、実際に起きていることは最悪を超えた事態なのである。

 東電のマヤカシに騙されたのが菅首相だった。地震・津波発生翌日の12日に福島原発を訪問した首相は東電から「大丈夫ですよ」と言われ、それをそのまま国民にアナウンスしたのだった。

 政府首脳が言う「過剰反応しないで」「冷静に」では、国民の不安は募るばかりだ。最悪の事態を想定して「こうなった場合はこういう手を打ちます」と説明するのが国民の生活を預かる政府の仕事だ。

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