東電の発表姿勢は先ず「最善のシナリオ」を提供する、と前稿で指摘させて頂いた。17日正午過ぎからの東電記者会見はその極致だった。
白煙が立ち上がる3号機に同日午後から警視庁の高圧放水車で陸上から水を注入する、と新聞・テレビが朝から華々しく報じていた。警視庁記者クラブから出稿された提灯記事である。
記者団の質問は「注水するのは、なぜ4号機ではなく3号機なのか」に集中した。
東電の広報担当者は「4号機の核燃料貯蔵プールには水があることが確認されている(から)」と答えた。
だが、米原子力規制委員会(NRC)のヤッコ委員長は16日、下院の公聴会で「4号機の核燃料貯蔵プールの水は蒸発して、なくなっている」と証言しているのである。
筆者はこの証言を説明したうえで、「本当に4号機に水はあるのでしょうか?」と質問した。
東電側の答えは「ヘリコプターから目視した」、「米軍は保守的な見解を示している」。
4号機の建屋は火災で損壊しており天井はない。上空からは丸見えである。ヘリコプターとは自衛隊のヘリだ。
相反する見解を示す東電と米軍。どちらが正しいのだろうか。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は次のように指摘する。「米軍はグアムから無人偵察機のグローバルホークを飛ばしている。搭載している高精度の光学カメラと赤外線探知機により、貯蔵プールの様子は手に取るように知っているはず」。
米軍から自衛隊に情報が渡っていないのか。渡っていても自衛隊が官邸に情報を上げなかったのか。
菅政権は「自衛隊は暴力装置」と発言した仙谷由人・民主党代表代行を官邸に呼び戻した。復興の要になる自衛隊はますます官邸に情報を上げなくなるだろう。
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