アフガニスタンの治安情勢は悪化が伝えられるようになって久しいが、タリバン政権崩壊(2001年)後、最悪の状態となっているようだ。
中東と中央アジアを管轄するアメリカ中央軍のベトレイアス司令官は11日、ワシントンの民間シンクタンクに「武装勢力による攻撃は01年以降で最高水準に達している。今後(攻撃は)さらに厳しくなる」との見通しを示した。
武装勢力による襲撃は今年1月から5月まで5万2,222件にも上った(ISAF=アフガニスタン国際治安部隊=まとめ)。昨年同期と比べ50%増という。治安はもともと悪かったが、もう一段、それも急激に悪化したようだ。
襲撃は1日平均にすると384件にも上る。NATO軍やアフガニスタン政府施設などが毎日384軒も襲われていることになる。無法状態と言っても何ら差し支えない。武装勢力とはタリバンやアルカイーダばかりではない。地方軍閥も絡む。
米軍当局者は「パキスタン国境にまたがるトライバルエリア(部族地帯)に潜伏する武装勢力が暖冬で動きやすかったため」と苦しい言い訳をした。米軍による部族地帯への激しい空爆は、どう説明するのだろうか。
部族地帯を掻き回したことにより、タリバンやアルカイーダはパキスタン北部に押し出された格好になっている。警察署や豪華ホテルが爆破テロに遭うなどパキスタン北部までアフガニスタンと似た治安状況になりつつある。
パキスタンは米国にとって南アジアの足場だ。もともと政情不安定なパキスタンを失えば、米国はアフガニスタンに手も足も出せなくなる。アフガニスタンの西はイラン、北はロシア、東は中国。反米国家ばかりがアフガニスタンを取り巻くことになるからだ。
オバマ大統領は米軍兵力を2万1,000増派する計画だ。ISAF全体の兵力は5万8,390、うち米軍兵力は2万6,215(4月現在)だから、増派の規模がどれだけ大きいか分かる。
だがこの地域にいくら大規模増派してモグラ叩きのスピードを上げても、モグラは一向に減らない。むしろ活発さを増す。
反米国家がユーラシア大陸を東西に貫くようになる前に、オバマ政権はアフガン撤退のシナリオを考えた方が得策だ。