アフガニスタンに展開するNATO軍の最重要・戦略要衝であるバグラム米空軍基地に21日、ロケット弾が撃ち込まれ米兵2人が死亡した。米軍にとって同基地が砲撃されたことは深刻な問題だ。
首都カブールから北東60キロのバグラム基地を筆者は07年11月に訪れた。高さ5~6メートルのぶ厚いコンクリート壁が数キロに渡ってつづき、要塞さながらだった。米軍は戦闘機の離発着はじめ兵員、物資の輸送などにバグラム基地を欠くことができない。
だが、アフガニスタンの民には憎しみの象徴でもある。反米感情の最大の源は誤爆だ。それをしでかす戦闘機はすべてバグラム基地から出撃する。
米軍は「訓練を強化して精度を高める」との改善策を発表したがムダだ。元タリバーン兵などの情報を元に出撃するのだが、その情報がいい加減だったりする。
誤爆で家族を殺された少年は武装組織に入る。米軍の作戦行動は敵を増やすことになる。アフガニスタンはほぼ全土が、反米・嫌米感情をたぎらせる人民の海となっていると言ってもよい。
バグラム基地へのロケット砲撃で、タリバーンの犯行声明は今のところ出ていない。どの武装勢力が撃ち込んでもおかしくない状況だ。
ISAF(アフガニスタン国際治安部隊)のまとめによると、武装勢力による政府施設や米軍基地への襲撃は1日384件も発生している。この地域を管轄する米中央軍のベトレイアス司令官自らが「武装勢力による攻撃は(カブール陥落の01年以降)過去最高の水準に達しており、今度さらに厳しさを増すだろう」と述べ、治安の悪化を認めた。
バグラム基地が砲撃されたことは、大阪城の本丸に徳川軍の大砲(おおづつ)が撃ち込まれたようなものだ。豊臣家(米軍)に天下(アフガン)を統治する力がないことを象徴している。
オバマ政権はさらに兵力2万1,000を増派する計画だが、焼け石に水だ。出口戦略を真剣に考えるべきだ。