日本でも法案提出―避難の権利を確立するチェルノブイリ法 

アレクサンドル・ヴェりキン氏。=17日、足立区勤労福祉会館。写真:諏訪京撮影=

アレクサンドル・ヴェリキン氏。=17日、足立区勤労福祉会館。写真:諏訪京撮影=


 ロシアでは「チェルノブイリ法」により、年1ミリシーベルト以上の被ばく量地域を「移住(避難)の権利地域」と定め、在留者・避難者それぞれに仕事、住居、薬、食料の支援をしている。年1ミリシーベルト地域(0.23マイクロシーベルト毎時)※といえば、東日本の至る所に存在しているではないか。

 1986年に発生したチェルノブイリ原発事故の収束作業に従事し、「チェルノブイリ法」の制定に尽力したアレキサンドル・ヴェリキン氏(1953年生まれ)が、去る20日、足立区勤労福祉会館で講演した。

 チェルノブイリ法が定める移住の権利地域の住民は、次のような補償を受ける―
1、国家の負担による追加医療保障(毎年の健康診断、薬剤の無料供与など)
2、非汚染地帯でのサナトリウム治療(保養)と追加の休暇
3、妊婦に対する居住地域外での延長休暇
4、月に100米ドル相当の支払い(健康増進用、追加食品用)
5、年金の30%割り増し

 「当時、“移住の権利地域”の年間線量については激しい議論が行われた。基準を年5ミリシーベルト以上にしようとする原発推進派と闘い、年1ミリシーベルト以上を勝ち取った」とヴェリキン氏は語る。

 チェルノブイリ事故後、原発作業員の健康被害が続出したが、国による支援はまったく無かった。1989年頃、原発労働者が中心となり彼らの権利を守るために同盟を設立し、住民たちも不十分な支援の改善を求めて加わった。チェルノブイリ法は、こうして1991年に制定された。

 先進的だったのは年1ミリシーベルト以上の被ばく量の地域を「移住の権利区域」とし、住民みずからが移住の有無の決定を下し、国は在留者と避難者のどちらに対しても補償を行う義務とした点だ。

 ただ、「移住の権利先進国」のロシアといえども問題を抱えている。

 「金銭だけでは無く、現物支給とした点がよい」とヴェリキン氏は言う。「当初は、金銭支給だったが、金銭だとそれをみんなウォッカに使ってしまうからだ」。

 プーチン政権となりさらに補償の問題が深刻化した。2004年以降、法律が変更され予算も削減された。現物支給から金銭支給へと変更になり、以前受けていたサービスを受け続けるには余りにも少ない額となってしまったのだ。同等の補償が受けられなくなり、多くの人が苦しんでいる、という。

「原発労働者のその後の健康状態は?」との質問にヴェリキン氏は宙を見上げた。「一緒に働いた仲間には、A4用紙いっぱいの病気がある人がいる」。=写真:諏訪京撮影=

「原発労働者のその後の健康状態は?」との質問にヴェリキン氏は宙を見上げた。「一緒に働いた仲間には、A4用紙いっぱいの病気がある人がいる」。=写真:諏訪京撮影=


 現在、国会で日本版チェルノブイリ法が審議されようとしている。『福島の子供たちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)』の大城聡弁護士が説明した。

 「報道ではほとんど取り取り上げられていないが、現在3つの法案が議員立法で参議院に提出されている。①与党・民主党からは、よりチェルノブイリ法に近い法案。②野党自民党、みんなの党、社民党が中心となった、子供の保護により力を入れた法案。③野党・公明党が中心となった健康診断に関する法案だ」。

 「中心となって法案を作成した議員は、政治家がこんなに仕事をするのかと驚くほど熱心。しかし、法案を通したくない、関心のない議員もいるため、私たちがどうやって後押しをするかが大事だ。そのために現在署名を集めている。この法案を望む市民の声は大きな力になるのではないか」。大城弁護士は強調した。

 ロシアでは年5ミリシーベルト以上であれば「移住が義務づけられる地域」も設定されている。日本は年20シーベルト未満であれば「住める」とする。被曝から国民を守ろうとする政府の姿勢において雲泥の差だ。

 ヴェリキン氏は「ソ連で5年かけて制定された“チェルノブイリ法”が、早く日本で制定される事を願っている」と力を込めた。

    《文・諏訪京》

 ※
自然からの線量0.04シーベルトと原発事故による追加被曝(ひばく)線量0.19シーベルトを足し合わせた。屋外で8時間、木造家屋で16時間過ごすと仮定すると、1年で1ミリシーベルトを超える。(環境省HPより)

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