関電大飯原発の再稼働を急ぐ野田政権の司令塔である仙谷由人・政調会長代理が14日、福井入りした。同じ日、県知事やおおい町長に会い再稼働への理解を求めた枝野幸男経産相が表役とするならば、仙谷氏は地元議員らに根回しをする黒子役だった。
仙谷氏は福井市内の自治会館で地元議員(県議会、市町村議会議員)約20名を集め、原子力発電の必要性をひたすら説いた――
「エレベータが止まる。情報通信も電話も電力で動いている」。仙谷氏は小学校の高学年が知っているような理屈から入った。
「脱原発、脱化石燃料を同時にやるのは至難の業だ。一朝一夕に現実の政策活動のなかでは容易ならざるものがある。ナローパス(狭い路地)を通るために原発再稼働に向けて決断するしかなかった…(中略)どうか(再稼働に)ご理解を頂きますようお願いします」。本論は気の利いた高校生並みのレベルだ。
この後、地元議員との質疑応答に移った――
もんじゅから30キロ圏内にある越前市の市議が次のように質問した。「政府事故調の結果がちゃんと出ていない。関電の安全対策は3日で出た。4大臣が足早に会談して再稼働を決めたのは拙速ではないか?」
「そういう見方もあるのかなあ?と思って雑誌を見ていた。政府は再稼働をめぐって専門家の知見を聴取してきた。事故原因については、専門家の間でほぼ同じ見方がされている…(中略)…保安院を含めて専門家集団はこの間対策を作ってきた。安全基準の作られ方は拙速ではない。遅いと理解している」
仙谷氏のとぼけた答えには失笑を禁じ得なかった。保安院は電力会社が言ってきた数字をそのまま安全委員会に出し、安全委員会は保安院の報告を追認する。
この国の原子力安全行政は電力会社が決定権を握っているようなものなのだ。野田政権は電力会社の意向に沿って再稼働を急いだのである。拙速と言わず何と言おう。
再稼働に慎重な見解を示した地元議員はわずか3人。倍の6人が賛成意見を述べた。聞いていて腰を抜かすほど賛成派は再稼働に積極的だった。
「福井での事故は一回だけ。技術力の高さがある。今まで安全に動いていた。その後福島の事故を受けてより安全になった」
「これからの日本を考えれば原発は必要だ。世界に日本製原発の安全性の力量を示す。雇用のためにも原発を今すぐにでも再稼働してほしい」
賛成派の議員たちは仙谷氏の覚えがめでたくなることで、自分の選挙を楽にしてもらおうとの下心があるのだろう。そうとしか思えないほど、原発を賛美した。仙谷陣営はマスコミフルオープンにして地元の同意を宣伝した。
仙谷氏が重ねて電力不足を強調した―
「電力なしに生活できない。原発をドラスティックに変えることは容易ならざるものがある。事業会社や雇用の問題をどうするかの見通しなしに(原発を止める)判断はできない」
仙谷氏の福井入りは、再稼働に向けて地元議員のネジを巻きに来たとしか言いようがなかった。
(文・諏訪 京/田中龍作)
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