日比谷交差点では右翼の街宣車が公会堂方面に突っ込もうとしていた。機動隊がバリケードを張り突入を阻止する。毎年5月3日の憲法記念日に繰り広げられる光景だ。
占領軍統合本部(GHQ)の置かれていた第一生命ビルが皇居と対峙する。マッカーサーは戦後憲法の草案をここで練った。護憲勢力のメッカである日比谷公会堂はすぐそばだ。
「自主憲法制定」の6文字を躍らせる右翼の街宣車は、騒音でしかないアジテーションをまき散らす。右翼がいつになく勢いづいていると感じるのは思い過ごしだろうか。
日比谷公会堂では毎年恒例の「5・3憲法集会」が開かれていた(主催:同実行委員会)。会場に入りきれなかった人々が公園に溢れ、特設のオーロラビジョンに映し出される憲法集会のもように見入った。
憲法12条のかぶり物を着ているケンパチおじさん。手には日本国憲法第12条の条文を書いたプラカードを持つ。憲法12条は「憲法が保障する自由と権利は国民の不断の努力によって保持しなければならない」と謳う。
「ここに来ている人たちは努力しているが、ほとんどの国民は憲法に無関心。安倍政権が改憲に向かっていることに関しても、圧倒的多数が無関心だ。改憲についての調査でも、賛成、反対それぞれ30%くらい居るが過半数は『どちらとも言えない』と答える。憲法に守られているだけでなく、憲法を守るために国民が努力しなければいけない」。
「安倍政権の解釈改憲はあってはならない。統治権力の暴政をしばるのが立憲主義。私が最高責任者だ、とは立憲主義をばかにしている」。ケンパチおじさんは淡々と語った。
76歳の女性(都内在住)は、解釈改憲に怒り心頭だ。「(安倍政権の改憲)もってのほか。歴史をもうちょっと勉強しなさい。いったい何が本心か、何がしたいのか分からない。現在の自分の権力を誇示したいだけではないのか。公明党が反対しそうだから、閣議決定できめないとか、全員が賛成でなくてもいいとか、独裁もいいとこ。周りは賛成の人だけ」。
安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇は、今月中にも集団的自衛権の行使を容認する報告書を出すものと見られる。
解釈改憲で憲法を事実上、変えることができるのであれば、国民の基本的人権でさえ制約できる。昨年末、制定された特定秘密保護法は基本的人権を侵すおそれが多分にある。解釈改憲はすでに始まっているのだ。