1日も早く原発を動かしたい。電力会社の思惑が露骨に見えた。原発の新規制基準が施行されたきょう、電力4社は原子力規制庁に5原発10基の再稼働に向けた申請をした。初日のそれも午前中である。
トップバッターは北海道電力(泊原発1~3号機)だった。同社の酒井修副社長が午前9時半、原子力規制庁の市村知也・安全規制管理官に申請書を提出した。
この後、20分間隔で関西電力(大飯原発3・4号機~現在稼働中だが9月で運転期限が切れるため再稼働申請した。高浜原発3・4号機)→ 四国電力(伊方原発3号機)→ 九州電力(川内原発1・2号機)と続いた。
4社とも重役が申請に訪れた。いずれも百科事典のような膨大な書類を携えている。
しかし新基準で必要とされる免震重要棟、防潮堤、ベントフィルターなどの設置はまだ(猶予期間があるとはいえ地元は不安だ)。欠くことのできない地元の同意も得ていない。大飯原発や泊原発のように「活断層のうえに立っている」と指摘されるプラントもある。
「見切り発車ではないか?」と記者団に質問された北海道電力の酒井副社長は苦しそうに「見切り発車ではない」と答えた。
こうまで「ないないづくし」なのに「見切り発車ではない」と答える酒井副社長に筆者は言った。「見切り発車どころか周りを確かめずに発車する無謀発車ではないか」と。
四国電力の谷川進・原子力本部副本部長は「科学的、合理的、効率的な審査をして頂きたい」と話した。「効率的とは一日も早く審査しろということか?」と筆者が質問すると谷川副本部長は「ムダのないようにという意味だ」とかわした。
規制庁が入るビルの外では、原発が立地する地元から駆け付けた環境団体などが「再稼働反対」のシュプレヒコールをあげた。
書類審査に6か月を要しその後現地調査をするため、年内の再稼働は難しいと見るのが妥当だ。
だが安倍首相は参院予算委員会(5月15日)で再稼働について「政府一丸となって対応し、できるだけ早く実現してゆきたい」と答弁している。参院選挙の結果しだいでは、あらゆる手段を使って再稼働を早めることも考えられる。