福島の原発事故から、今日で1年半が経つ。東電と共に責任を負う政府は、原発再稼働に向けてまっしぐらだ。この日、野田内閣は「原子力規制委員会」を9月19日に発足させることを閣議決定した。
委員5人のうち3人は、原子力村の恩恵に浴していた人達で違法性さえ指摘されている。委員長候補の田中俊一・前原子力委員会委員長代理は、「3・11」後も原子力推進のために謀議を練る秘密会合に出席していたことが明らかになっている。
にもかかわらず、田中俊一氏は13日にも福島県庁を訪問する予定だ。事故の教訓は何だったのかと言いたくなる。
呆れ果てるのは原子力村の総本山とも言える経産省だ。5日、超党派で作る「原発ゼロの会」が経産(資源エネルギー庁)官僚らを呼び、国会内で「再処理」について事情を聴いた時のことだ。
経産官僚は原発を止めれば莫大な費用がかかる、と説明した。核廃棄物の直接処理は環境にも負荷がかかる、とも。再処理を進めたいがための理屈である。だがこのイカサマは河野太郎議員(自民)が素早く見抜いた。
河野議員は「再処理で出てくるプルトニウムの処理にかかる費用は全く見積もられていないではないか」と厳しく追及した。経産官僚は涙目でうつむく他なかった。
政府に反省がなく再稼働に向かって突き進めば、大事故が再発する危険性は高い。「悲惨な事故を二度と起こしてはならない」。原発を止めたいと願う人々が、この日経産省を包囲した。
包囲に先立ち参加者たちが1分スピーチをした。
『原発いらない福島の女たち』の黒田節子さんの言葉が切ない―
「誰かがこう言っていました。郡山は静かで美しく地獄だ、と。また誰かがこう言っていました。福島は見えない透明な白い蛇に噛まれ続けている、と。子供たちを避難させて下さい。皆さんの力で避難させて下さい。皆さんの力で国に働きかけて下さい」。
福島集団疎開裁判・主任弁護士の柳原敏夫氏からは衝撃的な情報がもたらされた。「ついに子供の小児ガンが一人出た」というのである。柳原弁護士は「脱被曝、逃がすことをしなければならない」と強調した。
「福島に寄り添う」と口で言いながら大飯原発を再稼働させ、原子力規制委員会の田中俊一委員長候補に惚れ込む細野豪志環境相を、「党の顔に」担ごうとしたのが民主党である。
官僚たちは政権与党の無知につけ込み、天下り先確保のために原発を動かし続ける。市民、住民による直接行動しかないとすれば、この国の間接民主政治は終わっている。
《文・田中龍作 / 諏訪都・京改メ》
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