大飯原発の再稼働に必要な地元の理解を得るために4日夕、福井県庁で西川一誠知事と会談した細野豪志・原発事故担当相は、斉藤勁官房副長官と牧野聖修経産副大臣を伴っていた。再稼働に向けて揺るがない政府の姿勢をアピールするためだ。
西川知事は「再稼働するのか、しないのか」と業を煮やしていた。福井県庁内には「何だかだと言いながら野田政権は再稼働しないのではないか。自民党政権だったらとっくに原発を動かしていたはず」との見方が広がっている。
当初2日に予定されていた細野大臣との会談が延期されたのは、西川知事が野田首相の原発政策に不信感を抱いていたからだ。
4日夕の会談でも西川知事は「再稼働が必要であると首相が国民に向けて直接表明することが安心につながる」と強く促した。今なお福井県庁内には「再稼働しない、あるいは動かしてもほんの短期間だけ」と見る向きがある。
まだ表だってはいないが、原発慎重派の地元議員らで細野氏の事実上の後援会を立ち上げようという動きがある。議員の中には「脱原発」のスタンスを明確に表明している人もいる。福井県では慎重派はいても、共産党以外で脱原発を口に出すのは至難の業だ。
福井選出でもない細野氏(地元は静岡)を担ぐ彼らの目標は「細野氏を総理にすること」なのだそうだ。政界再編、脱原発とも絡んで細野氏をめぐる動向から目が離せない。
細野原発事故担当相と西川知事が会談する1時間ほど前から、県庁前には再稼働反対の市民が続々と詰めかけた。福井県(知事と議会)が容認すれば、残りのハードルはほとんどなくなるからだ。地元や近隣住民は危機感を強めた。
福井県あわら市から生後10か月の幼な子(写真)を抱いて足を運んだ夫婦がいた。「福島の事故から全然時間が経っていないのに再稼働とはお話にならない。もし原発事故が起きたら、この子が大きくなった時に申し訳がたたない」。こう語る妻(母親)の表情には悲壮感が滲んでいた。
福島県いわき市出身で現在福井市に住む女性(60代)は怒りを隠さない。「再稼働は許せない。いわきには親戚がいる。“炉心溶融には至らない”と野田首相は言うが魔法使いか?魔法使いだったら福島を元に戻してほしい」。
マスコミの世論調査でさえ「再稼働に反対」が半数を超える。野田政権は民意に逆らってまでも原発を動かして、その後どんな社会を創ろうというのだろうか。
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