何としてでも西日本で一番に瓦礫の焼却をしたい――なりふり構わぬ野田政権と北橋健治・北九州市長の姿勢が露わになった。22日、北九州市は警察に出動を要請、住民の抵抗を押し切って瓦礫を市内のゴミ焼却場に搬入した。
この日、宮城県石巻市から放射性瓦礫80トンが持ち込まれる『日明ゴミ焼却場』(※厳密には日明積出基地)の搬入口には、瓦礫の焼却に反対する住民が朝から大挙押し掛け警察とにらみ合いを続けていた。
膠着状態がわずかに動いたのは午後2時頃だ。警察が強制排除にかかり、搬入口前で体を張っていた2人の市民を公務執行妨害で逮捕した。その後もにらみ合いは続いた。瓦礫を積んだ大型トラック6台が一列に並び、今や遅しと入構を待った。
ピケを張る警察隊の足元でギターを奏で抵抗のフォークソングを歌う青年たちも現れ、緊張感の中にもかすかに和んだ雰囲気が漂った。門扉の前にしゃがみ込み般若心経を唱える女性(65歳)の姿も。「こうなったら仏様に頼るしかない」。女性は悲しそうな顔で一人つぶやくように語った。
午後5時過ぎ、事態が大きく動く。警察が増強部隊を送り込み、ピケはより強力になった。大型トラックのエンジンがかかる。
住民たちはトラックを止めようとするが、警察隊が力づくで押し返す。トラックは次から次へと構内へと吸い込まれて行った。あっという間だ。「お前ら人殺しの手伝いをするのかあ」。男性住民が忌々しそうに警察をなじった。
焼却場からは車で1分と離れていない場所に北九州市中央卸売市場がある。北九州市民の台所だ。子供の体内被曝を心配する住民が、瓦礫焼却に反対するのは当然の感情と言えよう。
これまで市民側の要求に満足な説明をしてこなかった北九州市環境局は、この日の午後6時30分から市内で説明会を開いた。瓦礫搬入から1時間後のことだった。
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厳密には日明積出基地。日頃は焼却灰を最終処分場に向けて船に積み込む基地として使われている。今回は放射性瓦礫が仮置きされる。瓦礫は23日から隣の焼却工場で一般ゴミと共に燃やされる。
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