昨年末から3週間余り続き、非戦闘員を含む1,300人が死亡したイスラエル軍のガザ侵攻は、今なお記憶に生々しい。「国連人権理事会ガザ調査団」団長のリチャード・ゴールドストーン元検事(南アフリカ)は20日、近く現地入りすることを明らかにした。
ゴールドストーン氏は国連の「ユーゴスラビア特別法廷」「ルワンダ特別法廷」で戦争犯罪を裁いた経験を買われて団長に選ばれた。
イスラエルは「調査はイスラエルに都合の悪い事実だけを抽出するのではないか」と批判的だ。だが、自らもユダヤ系のゴールドストーン氏は「イスラエル、ハマス双方の戦争犯罪について調査を進めたい」と強調する。ハマスのロケット弾が日常的に落ちるイスラエル南部のアシュケロンも視察したい、としている。
だが、イスラエルが調査に協力的でないため、ゴールドストーン氏らの一行はイスラエル側からガザに入れない事態も懸念される。その際はエジプト側からガザに入るという。
現地調査後は公聴会を開くことで国連のパン・ギムン事務総長とも打ち合わせせ済みだ。公聴会は中東で開催できない場合は、ジュネーブで開く。ガザ住民が公聴会で証言できる可能性は低い。イスラエルが出国を認めるとは極めて考えにくいからだ。そうなればビデオで証言してもらうことにしている。
イスラエル軍がガザに侵攻すると、例外なく夥しい数の非戦闘員が犠牲となる。ハマスの地下軍事施設は民家やモスクなどが入り口になっており、イスラエル軍といえども峻別できない。
そのため地域全体を徹底的に破壊する。村ごとスッポリと消えたりするのはこのためだ。「ハマスの施設を叩くための陸上侵攻では、市民がどうしても犠牲になる」。筆者の取材にイスラエル軍広報官は認めた。(JanJan掲載・3月18日「イスラエル軍将校『ガザ侵攻以外に選択肢はなかった』)。
イスラエル軍兵士の「パラノイア・トリガー」も大きな要因だ。対戦車ロケット砲がどこからともなく火を噴き、ブービートラップ(地雷の一種)が待ち受けるガザ。恐怖のあまりパレスチナ人を見れば、手当たりしだいに引き金に手を引くのが「パラノイア・トリガー」だ。
4次にわたる中東戦争で全戦全勝のイスラエル軍を前にガザを守ろうとするハマスは、得意のゲリラ戦術で対抗する。そこには市民が犠牲となる戦いの構図がある。「調査団」はひとつでも多くの事実を明るみに出してほしい。