
ファタハ司令部は1年余り前に爆撃されたままの姿だった。=14日、西岸ナブルス 撮影:田中龍作=
ヨルダン川西岸にあってジェニンに次ぐ激戦地のナブルスを訪ねた。
難民キャンプにはパレスチナ最大の武装勢力ファタハの司令部が置かれていることもあって、イスラエル軍が絶えず侵攻する。
パレスチナ側も襲撃に備える。民家の扉は鎧のような鉄板で武装されており(写真中段)、狭い路地は迷路である。対戦車地雷も仕掛けられている。
ジェニンやトゥルカレムのようにイスラエル軍により壊滅させられているのだろうと思っていたが、意外とそうではなかった。
2023年11月に空爆に遭ったファタハの司令部は柱だけ残ったままの状態だ。建物に撃ち込まれた銃弾の跡が無残である。
道路は剥がされた形跡もなく、建物も田中が1年余り前に訪れた以後、新たに破壊されてはいないようだ。

鎧を着たような民家(左)。=14日、西岸ナブルス 撮影:田中龍作=
きょう14日は金曜礼拝。モスクのスピーカーから流れるアラブ情緒豊かなアッザーン(礼拝への呼びかけ)がキャンプ中に響き渡った。
にもかかわらず上空をイスラエル軍のドローンが旋回した。高度を落としているのだろう。重低音がウルサイ。爆撃モードに入った時の音だ。
パンパーン。モスクからさほど離れていない所で銃声がした。パレスチナ側が発砲したのだろう。
アッザーンの宗教的なメロディーが流れ、殺人兵器のドローンが頭の上を飛ぶ、そして銃声…
平和な国の子供であれば精神に変調を来すような混沌とした環境のなか、難民キャンプの子供たちは歓声をあげて遊びに興じていた。
といって、田中は難民キャンプの日常を取材しに来たのではない。イスラエル軍が出入口を封鎖した際、どこから難民キャンプに潜入できるかなどをチェックするのである。
虐殺があった場合、救急車は入れない。イスラエル軍が出入り口を封鎖するからだ。虐殺を見届けるのがジャーナリストの仕事だと思っている。下見が実ったりしないことを願うのみだが。

頭の上を殺人兵器のドローンが重低音の唸りをあげて飛んでいるのにもかかわらず、子供たちは屈託がなかった。=14日、西岸ナブルス 撮影:田中龍作=
~終わり~
トランプの登場で限界点を失ったイスラエル軍の狂気をこの目で見届けるために、田中はパレスチナまで足を運びました。大借金です。御支援何とぞ御願い申し上げるしだいです。