
正門前で警備にあたっていた兵隊さんは意外にもすんなり田中の取材車を通した。=12日、ガザ最北端エレズ 撮影:田中龍作=
イスラエル軍が近く大掛かりな軍事作戦を展開すると聞き、田中はガザ突入を試みた。外国人ジャーナリストの入境は認められておらず、不可能であると分かっていたが、トライした。
ガザ最北端エレズの軍事施設正門前(写真最上段)まではスンナリと通過できた。取材車がワゴン車であったため、出入りの業者と思ったのだろう。
施設の中に入るとトレーラーに積まれた戦車(写真2段目)があったりした。

修理工場に持っていくのだろうか。トレーラーに積まれた戦車。=12日、ガザ最北端エレズ 撮影:田中龍作=
驚いたのはエレズ検問所(写真3段目)が健在だったことだ。ガザ住民やジャーナリストたちにとって忌まわしい施設である。
人間がガザに出入りするには、必ず通らねばならない「関所」だ。ひと棟の自動車工場ではないかと思うほどデカい。(物資は最南端のケレーム・シャローム検問所が関所となる)
パレスチナ人労働者はイスラエルに肉体労働に出かける際、エレズ検問所を通る他なかった。彼らは言葉で言い表せないほど屈辱的な目に遭った。「地獄の検問所」でもあった。
ジャーナリストたちは非人間的な施設であることを知っているためエレズ検問所を忌み嫌った。

地獄の検問所は巨大だ(写真奥)。=12日、ガザ最北端エレズ 撮影:田中龍作=
前置きが長くなったが、ガザを「トランプの楽園」にするのであれば、エレズ検問所はあってはならない存在のはずだ。
ガザ住民を移住させるのなら、イスラエル側の出入り口であるエレズのはずがない。太陽が西から昇ってもそれだけはない。エジプト側のラファ検問所からとなる。
逮捕逃れが目的で永遠に戦争を続けたいネタニヤフにとってガザにハマスがいてくれた方が好都合なのだ。口では「アラブ人に死を」などと叫ぶ極右政治家も同様である。
住民を追い出してガザを完全に平らげてしまった後でエレツ検問所を解体する…という理屈も成り立つが。

田中の取材車を捕捉し連行するイスラエル軍車両。=12日、ガザ最北端エレズ 撮影:田中龍作=
軍事施設の正門前を通過して15分か20分くらい経っただろうか。田中は写真を数カット撮り、記念の立ちションをしたのだが、用を足し終えないうちにイスラエル軍に捕捉された。
兵士から徹底的に調べられた。ミリタリーポリスまで駆け付けてくる騒ぎとなった。「カメラを分解して撮った写真を見せろ」とまで追及された。
田中は「私がカメラのシャッターを押そうとしたら、あなた達に捕まった」の一点張りで逃げ切った。
イスラエル軍の対日感情は良好と聞くが、そうでなかったら、まだ拘束されていたはずだ。
~終わり~
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トランプの登場で限界点を失ったイスラエル軍の蛮行をこの目で見届けるために、田中はパレスチナまで足を運びました。
大借金です。御支援何とぞ御願い申し上げるしだいです。