原発事故で真っ先に犠牲となるのは子供だと云われる。8日、間もなく子供を出産する妊婦が東電前で抗議の声をあげた。
ハンドルネーム、猫村さん(都内在住・会社員)は、出産予定日が3月17日。大きくつき出たお腹には新しい命が宿っている。猫村さんがプチデモに立つきっかけになったのは、体内被曝を考えない病院給食だった。
出産時に入院を予定している産院の給食メニューに魚料理が入っていたのだ。「カレイ」まで登場する。海底から獲れる魚は放射能の含有量が多い。魚に限らず、その病院は食材の放射能汚染に無頓着だった。
「お腹の子供が被曝する」。猫村さんは恐くなった。入院中は、放射能に汚染されていない食材を使うレストランの食事を摂る予定だ。
まだ自宅にいる猫村さんは、九州の食材を買うために電車を乗り継いで遠くの商店街まで出かける。値段は1・5倍もかかるが、胎児の健康には代えられない。「放射能を垂れ流した東電には怒りを覚える」と悔しそうに語った。
猫村さんは原発事故が起きると娘(当時3歳)を連れて名古屋に避難した。「妊娠したと分かった時は、西日本に住むことを本気で考えた。だが会社勤めの身には無理だった」と話す。
猫村さんはマイクを握った――
「お母さんたちはどれだけ不安に思っていることでしょう。母親たちの不安は100年以上も続くのです」。彼女はソフトに語りかけた。
「この世界にこんなことが起きているなんて受け入れたくないんです」。目はみるみる涙で一杯になった。
「お母さんたちは母乳からセシウムが出ないように苦労してます。それでもセシウムが出るんです」。声がちぎれるようだ。
猫村さんは出産したらすぐに母乳の放射能を測定することにしている。「子供を大事にしない国家に将来はない」。筆者は繰り返し述べて来たが、子供を産む母親を不安に陥れる国家も同様だ。
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