
デモ隊の最前列は逮捕も覚悟のうえで機動隊と間近で対面する。=2019年、香港 撮影:田中龍作=
どこかの国の首相のように中国をいたずらに刺激して怒らせるのは愚の骨頂だ。
一方で中国性善説に立つのも無防備である。どちらも国を危うくする。
中国を正しく知る例を紹介しよう―
「政治犯を中国に送るな」「普通選挙の実施を」「言論の自由を」…
民主主義国家では当たり前のことを要求に掲げて、香港の学生たちが立ち上がった。2019年のことだ。
警察の弾圧は凄まじかった。屈強な機動隊を大量に投入しデモの鎮圧にあたった。
デモ隊が逃げても100mを10秒未満で走るようなスプリンターの部隊が追い駆けて捕まえた。

機動隊は催涙弾を放ちながら前進してきた。=2019年、香港 撮影:田中龍作=
ドーベルマンのごとき大柄な機動隊員に組み敷かれた少年少女の悲鳴が、今も田中の耳にこびりついている。
道路上にはピクリともしない人間の体があった。瞳孔が開いていることを医師が確認すると、警察は医師を遺体から引き離した。
遺書を書いてデモに参加する学生も少なくなかった。「お父さん、お母さん、お世話になりました。私は自殺しません」と書いて。
警察は自分たちの行き過ぎた警備で殺しても、自殺として処理する。それを恐れて遺書に「私は自殺しない」と書くのだ。
2020年4月までに8千人超が国家安全法違反などで逮捕された。(wiki)
この年、1万人強の香港人が台湾に逃れた。(台湾内政部移民署まとめ)

国慶節の前々日、少年少女たちが大量逮捕された。アスファルトの地面は燃えるように熱い。=2019年、香港 撮影:田中龍作=
デモ隊の中で最前線に立つのが「勇武派」と呼ばれる若者だ。最も逮捕されやすい位置なだけに消耗も激しい。
勇武派の大学生が田中の取材助手を務めてくれていた。
当時、「デモ隊の女の子が警察にレイプされている」という情報があった。確認は難しい。
だが、田中の助手は「実際に私が警察官にレイプされて証拠をつかむんだ」と意を決していた。
彼女は警察に追われ高速道路に飛び込んだことがある。ドライバーが急ブレーキを踏み、彼女は轢かれずに済んだ。
「私たち香港人は普通選挙を勝ち取るために死にもの狂いで戦っています。日本人は選挙を大事にしてほしい」。
日本だと空気のようにある普通選挙を主張するのも命懸けなのが中国である。
~終わり~
◇
田中龍作ジャーナルは現場主義の多額な交通費を必要とします。読者にありのままを伝えるためです。





