事前に知っていたか否か、はともかく。10月7日、ハマスが先制攻撃を掛けてきた時、ネタニヤフ首相は小躍りして喜んだに違いない。
ネタニヤフ首相は自らの汚職逃れのために司法制度改革(悪)を目指した。これが国民の猛反発を浴び、数万人規模のデモが続いていた。
そこに戦争が降って湧いた。大規模デモで追い詰められていたネタニヤフ首相は救われた。
容赦ないガザへの攻撃が、国際社会の批判を浴びれば浴びるほど、汚職逃れの司法制度改革から目をそらすことができる。
ネタニヤフ首相自らが「停戦しない」と宣言しているのはその表れだ。現下の状況に首相は笑いが止まらぬはずだ。
ネタニヤフ氏は人質の即時全員解放を求める。だがハマスが応じるはずがない。
人質を解放すればハマス側に取引材料がなくなり、一気に殲滅されることは目に見えているからだ。
かりに人質解放を条件に停戦合意がなされたとする。
ところがイスラエルは停戦合意後も何食わぬ顔で攻撃してくることをハマスは知っている。
2008‐09年戦争での、停戦発効後のことだった。当時はドローンではなく飛行船がガザ上空をゆっくりと旋回していた。
「ズドン」。地上で何か不審な動きがあったのだろうか。飛行船からミサイルが投下されたのである。死者が出た。
最高権力者のネタニヤフ首相には戦争継続の意志が満々とみなぎる。ハマスにはイスラエルへの不信感が根強くある。
停戦は夢のまた夢である。
※
田中は人類史に残る大虐殺が起きる恐れのあるガザを取材するためにパレスチナに赴きました。
危険手当を伴うためにドライバーに日額1千ドル(約14万円)も払わなければなりませんでした。
飛行機代、ホテル代で借金まみれとなっているところに、巨額の取材費がのしかかっているのです。
連絡先:tanakaryusaku@gmail.com