【パレスチナ報告】ネタニヤフ首相とハマス ~停戦できないそれぞれの事情

イスラエル軍が誇るアイアンドームの基地。ハマスが先制攻撃を掛けた7日は、迎撃漏れが目立った。=10月、ガザボーダー 撮影:田中龍作=

 事前に知っていたか否か、はともかく。10月7日、ハマスが先制攻撃を掛けてきた時、ネタニヤフ首相は小躍りして喜んだに違いない。

 ネタニヤフ首相は自らの汚職逃れのために司法制度改革(悪)を目指した。これが国民の猛反発を浴び、数万人規模のデモが続いていた。

 そこに戦争が降って湧いた。大規模デモで追い詰められていたネタニヤフ首相は救われた。

 容赦ないガザへの攻撃が、国際社会の批判を浴びれば浴びるほど、汚職逃れの司法制度改革から目をそらすことができる。

 ネタニヤフ首相自らが「停戦しない」と宣言しているのはその表れだ。現下の状況に首相は笑いが止まらぬはずだ。

人質全員の写真が国家の玄関に並ぶ。=3日、テルアビブ空港 撮影:田中龍作=

 ネタニヤフ氏は人質の即時全員解放を求める。だがハマスが応じるはずがない。

 人質を解放すればハマス側に取引材料がなくなり、一気に殲滅されることは目に見えているからだ。

 かりに人質解放を条件に停戦合意がなされたとする。

 ところがイスラエルは停戦合意後も何食わぬ顔で攻撃してくることをハマスは知っている。

 2008‐09年戦争での、停戦発効後のことだった。当時はドローンではなく飛行船がガザ上空をゆっくりと旋回していた。

 「ズドン」。地上で何か不審な動きがあったのだろうか。飛行船からミサイルが投下されたのである。死者が出た。

 最高権力者のネタニヤフ首相には戦争継続の意志が満々とみなぎる。ハマスにはイスラエルへの不信感が根強くある。

 停戦は夢のまた夢である。

砂塵を巻き上げて進むイスラエル軍の装甲者。=10月、エレツ 撮影:田中龍作=

 ※
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パレスチナ(ガザ・西岸)