ネタニヤフ政権の極右閣僚がメディアのインタビューに「核兵器をガザに落とすことも選択肢」と答え、日本のマスコミ各社が即座に反応した。田中は別段驚きもしなかった。
ガザボーダーのイスラエル領はキブツの田園地帯が広がる。ガザは東西に10キロしかない。もし核兵器をガザに落とせば、イスラエルの農業は大打撃を受ける。
日本の常識だと、「だからイスラエルはガザに核を使ったりしないよ」となるが、この国はそんなに甘ちょろくない。
福島の原発事故が起きると、イスラエル軍の野戦病院が三陸沖に登場した。別に負傷した福島住民の手当をしているわけではない。
原発のある大熊町と三陸沖との距離を、イスラエルにとってのガザ、イランと比較するのはやや難がある。ただ放射能に関するデータを取ることは十分に可能だ。
民族が根絶やしにされかけた経験を持つイスラエルは大量破壊兵器に敏感だ。
ハマスは「ユダヤ民族を地中海に追い落とす」と決意表明し、イランのアフマディネジャド大統領(当時)は「イスラエルを地図から消し去る」と呼びかける。
ガザにはかつて核技術者がエジプト経由で送り込まれたことがあったが、イスラエルが暗殺した。
イランは核兵器の開発を着々と進め完成間近とまで言われる。イスラエルが完成前にイランの核施設を叩くことは既定方針である。
こんなことがあった。サダム・フセインのイラクが開発を進めていた原子炉が完成の域に達しつつあることをモサドがキャッチした。1981年のことだ。
イスラエル軍はバグダッド近郊にあった「原子炉オシラク」を攻撃、破壊した。今のように精密誘導弾などない時代にパイロットが手動で爆弾を投下し、命中させたのだ。
イスラエルは核兵器は保有するが原発は持たない。原発事故を経験していながら、国土の海岸沿いにべったりと原発を置く東アジアの間抜けな国とは、国防意識が月とスッポンほど違うのだ。
イスラエルはよくも悪しくも核と寄り添う国である。
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田中は人類史に残る大虐殺が起きる恐れのあるガザを取材するためにパレスチナに赴きました。
危険手当を伴うためにドライバーに日額1千ドル(約14万円)も払わなければなりませんでした。
飛行機代、ホテル代で借金まみれとなっているところに、巨額の取材費がのしかかっているのです。
連絡先:tanakaryusaku@gmail.com