物価高で低所得者はさらに食えなくなってきた。東池袋公園でNPO法人TENOHASIが行っている炊き出しに、最多の604人が並んだ。用意していた580食を上回る人数だった。先月27日のことだ。
食えなくなり、次に家賃が払えなくなれば、人は路上に弾き出される。持ち金が尽きればネカフェに泊まることもできなくなる。
人はいとも簡単にホームレス(野宿者)となるのだ。明日は我が身である。
台風一過の昨日(3日)、代々木公園に行ってみた。ホームレスのビニールテントが暴風雨で潰れたりしていないか気になったからだ。
テントはいずれも健在だったが、めっきり数が減っていることに驚いた。
東京オリンピック(2021年)のパブリックビューの会場建設で代々木公園の樹木が伐採されていると聞き、駆け付けた時、以来だ。
その時は10張以上テントがあったが、きのう数えてみると、わずか数張。
20年間、ここに住み続けているホームレスの男性によれば「6~7年前までは100張はあった」。話半分としても50張はあったことになる。確かに来るたびにテントの数が減っている。
理由は東京都が追い出しにかかっているからだ。「アパートと仕事を紹介してやる」などと甘言を弄して、公園を出て行かせる。出る時には「二度と戻って来ません」と一筆取られるという。
ところが仕事は土木作業(土木が悪いと言っているのではない)。ホームレス暮らしでガタガタになった身に勤まるものではない。
仕事を辞めれば現金収入がなくなる。東京都の家賃補助は2年まで。それを過ぎれば家賃はすべて自分で払わなければならなくなる。だが、収入がないので払えない。
こうしてホームレスに逆戻りなのだが、帰るべきテントはもうない。重い荷物を持ちながら転々としなければならない。悲劇である。
前出の男性は飲食店の社員だったが、体を壊して入院。退職した。家賃を半分払って友人のアパートに住んでいた。貯金が底をつき払えなくなり、ホームレスとなった。
天井知らずの物価高、電気料金の大幅値上げ、そして増税・・・景気がさらに悪化すれば失業者が増える。当然の帰結としてホームレスも増える。
行政はテントも含めた居住政策を人道的見地から考える必要がある。テントを減らすことなどあってはならない。
公営住宅に空き家が数えきれないほどあるではないか。
~終わり~
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