ちょうど朝ごはんを食べ終えた時だった。「ドカン、ドカン」。重低音が2発、大気を裂いて田中の耳に飛び込んできた。10日8時20分頃である。
着弾したのは田中が投宿するホテルから歩いて5分の地点だった。2発はわずかに離れた場所に落ちた。大統領府からは西へ約1㎞。まさしくキーウ中心部である。
一つは文科省前の道路、もうひとつはキエフ国立大学前の公園に落ちた。
取材を進めていると、また「ドカン」「ドカン」と重低音の爆音が響いた。
音がする方角に取材車を走らせると電気とお湯を供給するエネルギー企業「デテック」の本社ビルが半壊していた。
大統領府からは西へ2.3㎞。こちらもキーウの街なかである。
ロシア軍はエネルギー関連施設を狙ったようだ。キーウ郊外の火力発電所も爆撃に遭った。
キーウ市のクリチコ市長は「いくつかの地域で停電している」と明らかにした。
ウクライナ国防省によればロシア軍は10日、ウクライナに向けて83発のミサイルを放った。うち43発を迎撃。40発が着弾した。
ロシア軍はカスピ海上の戦略爆撃機からもミサイルを発射した。戦略爆撃機は核搭載が可能である。
ウクライナ緊急事態省によるとウクライナの8州で全戸停電、部分停電している。
ベラルーシのルカシェンコ大統領はロシア軍と合同部隊展開することを決めた。ベラルーシとウクライナの国境にはロシア軍2万人が集結し始めているとの情報がある。
国境からキーウまでは直線距離にしてわずか76㎞。2月の開戦当初のようにロシア軍が首都のすぐ手前まで押し寄せてくることも十分に考えられる。
ガソリンスタンドに長蛇の列ができ、キーウ中心部の道路は車も少なくひっそりとしている。
戦争はまた振り出しに戻るのだろうか。
~終わり~
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読者の皆様
核搭載が可能なロシア軍の戦略爆撃機がカスピ海上空からミサイルを発射しました。
ベラルーシの事実上の参戦により、戦争は振り出しに戻る可能性があります。
田中は通常戦と核戦争の両方をたった一人で見届けなければなりません。倒れそうですが、いま倒れる訳にはいきません。
ご支援何とぞ御願い申し上げます。
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