「現場はひっ迫しております」を口実に政府を操り、暴走したのは関東軍だった。半世紀余りが経った今、「電力需給のひっ迫」を理由に計画停電で市民を不安に陥れ、原発の必要性を人々の頭に刷り込もうとしているのが東京電力のようだ。
電力需要量のデータは東電が一手に握っていることが分かった。計画停電担当者が筆者に明かした。担当者は「政府が持っている電力需要量の数字は弊社が渡したもの」と話す。
筆者は18日夕、枝野官房長官の記者会見で、この事実をぶつけた。
枝野長官は「その都度都度(東電から)報告を受けている」と答えた。
筆者は「政府はオリジナルの数字を持っていないということですね?」と畳み掛ける。
枝野氏は「当然、電力消費量というのは電力会社が(電気を)供給しているのだから、その消費量を把握していて当然です」。
14日から始まった計画停電により17日までに関東1都6県、山梨県、静岡県の一部で3,820万戸の電気が数時間に渡って停まった。もちろんJR、東京メトロ、関東一円の私鉄も例外ではない。
工場も満足に操業できないため食品をはじめ生活必需品が不足する。電気の有無は市民の死活に関わるのである。ゆえに政治は電力業界に対して及び腰になる。通産省(現・経産省)からの天下りが拍車をかける。
政府は国民の生活を預かる以上、電力需要は自前のデータを持つべきである。電力会社は需要を都合のいいように操作し、原発建設の口実としてきた。
「(政府独自の需要データを持っていなければ)東電の言うなりではないですか?」。筆者の問いかけを官房長官はどう受け止めたのだろうか。
昔関東軍、いま東電。政府を壟断する勢力が起こした日中戦争は大東亜戦争、太平洋戦争と拡大し日本を破滅へと導いた。
◇
田中龍作の取材活動は読者に支えられています。